後遺障害逸失利益の請求権は,被害者が事故と無関係にどのような原因で死亡しても失われないとした判決です。

[後遺障害,死亡,逸失利益]

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後遺障害逸失利益の請求権は,被害者が事故と無関係にどのような原因で死亡しても失われない

最高裁平成8年5月31日判決
自動車保険ジャーナル・第1162号 高民集29巻3号649頁

【事案の概要】
 被害者(当時,高校3年生男子)は,平成2年4月15日午前8時20分頃,千葉県八日市場市内で自動二輪車を運転進行中,ガソリンスタンドから右折発進した被告運転の小型貨物車との衝突を回避しようとして転倒し,左膝開放骨折,右第5中手骨骨折の後,平成3年9月19日12級相当の左膝痛,右第5中手骨変形等の後遺障害を残していたところ,約3ヶ月後の同年12月10日,別の交通事故で死亡しました。


【判決の趣旨】
 右のように解すべきことは(注:最高裁平成8年4月25日判決=貝採事件判決のように解釈すべきことは),被害者の死亡が病気,事故,自殺,天災等のいかなる事由に基づくものか,死亡につき不法行為等に基づく責任を負担すべき第三者が存在するかどうか,交通事故と死亡との間に相当因果関係ないし条件関係が存在するかどうかといった事情によって異なるものではない。本件のように被害者が第二の交通事故によって死亡した場合,それが第三者の不法行為によるものであっても,右第三者の負担すべき賠償額は最初の交通事故に基づく後遺傷害により低下した被害者の労働能力を前提として算定すべきものであるから,前記のように解することによって初めて,被害者ないしその遺族が,前後二つの交通事故により被害者の被った全損害についての賠償を受けることが可能となるのである。


【コメント】
最高裁平成8年4月25日判決=貝採事件判決で示された①逸失利益算定の基準時を「交通事故時」として,②平均的な稼働可能期間は稼働できると原則的には推定できるとした点については,水難死という事故にとどまらず

「死亡が病気,事故,自殺,天災等のいかなる事由に基づくものか,死亡につき不法行為等に基づく責任を負担すべき第三者が存在するかどうか,交通事故と死亡との間に相当因果関係ないし条件関係が存在するかどうかといった事情によって異なるものではない。」

と,一切の死亡に及ぶことを明らかにしています。これによって,逸失利益は被害者の死亡によって影響されないという切断説が広く適用されることが明らかにされました。

 

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