外傷性ヘルニアと事故との因果関係が認定された判決です。但し,素因減額

[ヘルニア,後遺障害,椎間板,素因減額]

59歳男子の外傷性頸椎椎間板ヘルニアにつき事故との因果関係を認めたものの8年前からの糖尿病等加齢の寄与で3分の1減額をしました。
神戸地裁 平成19年10月1日判決(確定)
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1743号(平成20年7月24日掲載)


【事案の概要】
 被害者(当時59歳男子畳職人)は,平成15年6月18日,外傷性頸椎椎間板ヘルニア等から6級5号の脊柱障害等併合5級後遺障害を残したとして,訴えを起こしました。
糖尿病と加齢が影響したかが素因減額を巡って争点となりました。

【判決要旨】
①衝突で一時的に気絶,同乗の妻は鎖骨骨折等からも衝撃が強かったことがうかがわれ,「事故を契機として生じた」と椎間板ヘルニアとの因果関係を認めました。
②脊柱に著しい運動制限を残すことから6級5号を認定しましたが,骨盤変形と神経障害を残す点については,5級相当の上肢の用を全廃したものと「同等視するのは疑問である」として,被害者の労働能力喪失率は6級の67%と認定しました。
③被害者の頸椎椎間板ヘルニアに対し,被害者の糖尿病の持病と「加齢が寄与した割合は3分の1である」と素因減額をしました。


【コメント】
判決が,被害者の椎間板ヘルニアについて外傷性を認めた理由は次の通りです。
①被害者車両の前部が破損し,被害者自身が一時的に気絶し,同乗者である被害者の妻が骨折を負うほどの強い衝撃が,被害者に加わったこと
②入院の初期から,上肢の疼痛を訴えており,上肢の疼痛は,打撲によっても生じ得るが,頸椎ヘルニアの症状として生じ得るものであること,腫張が消失して退院した後も,電気が来るような感じを訴え,左肩から左腕の痛みで畳が持てないと訴え,長期にわたって肩から左上肢の痛みを訴えており,そのような長期にわたる痛みは打撲による痛みとは考えにくいこと
③本件事故までは下肢の痛み等が中心であったのに対し,その他にも及び,従前になかった電気が走るような感じが生じていること
以上から頸椎椎間板ヘルニアは本件事故を契機として生じたものであると認められる。
この判決は,外傷性について,(1)衝撃の大きさ(2)当初からヘルニアの症状が出ていたか(3)事故前にも同様の症状が出ていなかったか を検討して判断することを示しています。

 

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