事故前から腎臓機能障害の状態にあったところ,事故後人工透析までを要することとなった後遺障害の因果関係に関する判決です。

[じん臓,人工透析,入院,因果関係,後遺障害,既往症,造影剤]

事故による治療中に腎機能障害となった被害者の事案ですが,従前から腎臓機能障害の状態にあったものの,人工透析までを要することとなった直接のきっかけは本件事故による造影剤の使用によるものと考えられるとして,5級3号後遺障害との因果関係が認められました。

東京地裁八王子支部 平成13年9月26日判決
<出典> 交民集34巻5号1336頁

【事案の概要】   (クリックすると回答)


被害者(昭和15年7月11日生)が運転する乗用自動車と加害者が運転する乗用自動車とが衝突する交通事故が発生しました。

事故により被害者は右第6,第7肋骨骨折,肝挫傷等の傷害を負い,入通院治療を受け,入院加療の経過中に慢性腎不全が急性に増悪し,平成7年6月6日から人工透析導入となってしまいました。

被害者は,入院先であるA病院のCT検査の際に用いられた造影剤の影響により慢性腎不全が急性増悪し,事故の3日後から人工透析を受けることになり,退院後も透析のための通院を要することになりました。

平成7年7月31日には◎◎市から腎臓機能障害による身体障害者等級表による1級の認定を受けました。

被害者は,腎機能障害を含めて後遺症が自動車損害賠償保障法別表の後遺障害別等級表で5級3号に該当するとの認定を受けました。

【判決の趣旨】  (クリックすると回答)


被害者には4,5年前から腎機能障害の症状があったところ,本件事故による負傷の治療中に機能障害が増悪したこと,その原因は造影剤の使用による負荷であると考えられること,本訴提起後,これらの症状について算定会の調査事務所による審査の結果5級3号の障害に該当すると判定された。
その結果将来にわたって血液の人工透析を受けるようになり,現に日々の生活でもろもろの不自由を来していることが認められる。

そうであれば,被害者は本件交通事故によりその稼働能力の相当部分を失うに至ったと認めるべきところ,従前被害者に腎臓機能障害の症状があったからといって,喪失の程度を79%に達すると認めても公平を欠くとまではいえない。

【コメント】  (クリックすると回答)


被害者は,事故前から腎臓機能障害の状態にあったものです。
それが,入院の際のCT検査の際に用いられた造影剤の影響により急性増悪し,人工透析を受けるまでに程度が悪化して,後遺障害5級3号に該当するとの認定を受けたものです。

つまり元からあった私病が,悪化した場合にどのように考えるのか。因果関係があるのかという問題です。本件では,因果関係を認めています。

他方では,被害者が同様に腎臓機能低下により血液透析が必要となったとして後遺障害3級を主張したのに対して糖尿病性腎臓症の既往症から因果関係を否定した判決もあります(名古屋地裁平成11年11月24日交民32.6.2001)。

両者の違いは,事故前の腎臓機能障害の程度及び既往症の原因によるものだと思われます。おそらく,名古屋地裁判決は,事故によらなくとも既往症が血液透析を必要とする程度まで悪化した蓋然性が高いと見たと思われます。

交通事故における賠償や過失判例をご覧いただき、さらなる疑問にも弁護士として明確にお応えいたします。お気軽にご相談ください。

0120-56-0075 受付時間:月~金(土日祝日も対応)午前9時30分~午後10時

フォームからのご相談予約はこちら

ページの先頭へ戻る