駐車場内での自転車と乗用車の過失割合に関する判決です。

[自転車,過失相殺,駐車場,駐車場内の優先関係]

夜間,駐車場内での被害者自転車と加害者乗用車の衝突の過失割合については,明確な優先関係が生じるとは考え難い」として,駐車場内を通過した自転車3,車高の高い車両の陰から漫然と前進してきた加害者車両7の過失割合を認定しました。
東京地裁 平成20年11月4日判決
事件番号 平成18年(ワ)第7981号 損害賠償請求事件
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1778号(平成21年4月9日掲載)

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【事案の概要】
被害者(当時,43歳男子経営コンサルタント)は,平成15年10月22日午後0時35分ころ,千葉県市川市内の駐車場内を自転車で進行中,発進した加害者運転の乗用車に衝突され,左大腿骨骨折等で21か月入通院して併合8級後遺障害を残しました。
駐車場内の事故であるため,その中を通過しようとした被害者と,駐車場から発進しようとした加害者との間に優先関係があるのかが問題となりました。

【判決の趣旨】
加害者は,本件事故現場の駐車場において加害車両を前進させる際には,前方及び側方の状況を十分注意して運転する義務があり,特に自車の右側には車高の高い車が駐車しており,見通しが悪かったのであるから,より安全に注意して加害車両を進行させる義務があったにもかかわらず,これを怠り,駐車場内で加害車両を漫然と前進させたため,加害車両の右前方から進行してきた被害者自転車を発見することが遅れて,加害車両を被害者自転車と衝突させた過失があるものというべきである。
他方,被害者についても,自動車の往来が予測できる本件事故現場の駐車場内を通過する際に,前方及び側方の確認が不十分であったために加害車両の存在に気付くのが遅れ,衝突に至ったことについて過失がある。
そして,双方の過失の態様に照らすと,本件事故における被害者の過失割合は3割,加害者の過失割合は7割であると認めるのが相当である。
なお,被害者と加害者らは,それぞれ両車の進行路の優先関係を主張するが,公道上の交差点と異なり,駐車場内である本件事故現場において両車の間に明確な優先関係が生じるとは考え難いから,上記各主張は採用できない。

【コメント】
駐車場内の事故が多発しています。その場合において,過失割合についてどのように考えるのか,実は私たちも頭を悩ますところです。本件では,被害者の自転車も,加害者の乗用車もそれぞれ,公道上での交通法規に基づく優先関係を主張しました。被害者は,走行していた通路の幅が広いこと,これに対して加害者は,被害者側には一時停止規制の会ったことです。判決は,「公道上の交差点と異なり,駐車場内である本件事故現場において両車の間に明確な優先関係が生じるとは考え難い」としていずれの優先関係の主張を却けました。そして,本件では,被害自転車3に対して,加害車両7の過失割合としました。
しかし,この判断に至る理由が必ずしも明らかではありません。
本件は,
(1)自転車対乗用車の事故であること
(2)自動車は駐車スペースから発進してきたのに対して自転車は通路を走行していたこと
この二つの要素が絡まっていると思われます。
そして,(1)自転車対乗用車の事故であること及び被害者の受傷の程度が大きいことが判断に影響したかは定かではありません。

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