高速インター出口での事故における過失割合についての判決です。

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高速道路のインター出口を出た渋滞中の場所にて並走中の2台の車両が接触した事故で,過失割合が問題となった判決です。
他の車両との接触の可能性を認識できたにもかかわらず,発進した車両の過失を大きいとしました。

東京高裁 平成7年8月8日判決
<出典> 交民集28巻4号1016頁

【事案の概要】   (クリックすると回答)


A車とB車は,相前後して,東名高速道路横浜インターチェンジの料金所を通過し,いずれも横浜新道方面への一般道に出ようとしていました。

当時,右一般道へ至る出口付近は,横に広い料金所の幾つものゲートを出た車両が一斉に狭い部分に殺到して混雑を極め,各車両は前車の動きに即応して一寸刻みに進むことを余儀なくされる状態にありました。

A車とB車は,A車が左側,B車がその右側の隣り合わせとなり,B車が若干A車に先行した状態で,いわゆるのろのろ運転で進行しているうち,A車がB車に接近しすぎて接触の虞れが生じていました。

そこで,B車の助手席に乗っていたCはこれを察知し,窓を開け,A車に向かって「左にハンドルを切れ」と言う意味のことを叫びましたが,Aはこれに気づかず,また,すぐ左隣には他の車両もあって左にハンドルを切ることができる状況にもありませんでした。

このような状態にあったとき,B車の前車が前に進んだため,Bはその分だけB車を前進させたところ,B車の左後部荷台下の部分とA車の右前輪上部フェンダー及び前部バンパーとが接触し,本件事故に至ったものです。

そうして,過失割合が控訴審まで争われました。

【判決の趣旨】  (クリックすると回答)


Bは,渋滞で停車したB車の左横に,Aが合流しようとしてA車の右前部を接近させていたのを,同乗のCの言動により認識し得たのであるから,B車を発進させるに当たっては,A車の位置を的確に把握し,ハンドルを右に切るなどしてそれ以上同車に接近しないように運転すべき注意義務があるのに,この義務を怠り,前車が進行したのに応じて漫然とB車を発進させたため,同車の左後部側面を停車中のA車の右前輪上部のフェンダーとバンパーに接触させて,同部分の表面に擦過痕の損傷を生じさせたものである。

したがって,Bは,過失による不法行為者として,本件事故によってAに生じた損害を賠償すべき義務があるというべきであるが,

一方,Aにも,右のような状況のもとでA車をB車に極めて接近させて停車させた過失があり,これが本件事故の一因となっていると認められるから,Bの損害賠償額を定めるに当たっては,Aのこの過失を斟酌すべきである。

そして,本件事故の直接の原因がB車を発進させたことにあり,Bがその際に僅かにハンドルを右に切りさえすれば容易に避けることができたものであること,その他右認定の本件事故の態様と程度に鑑みると,

斟酌すべきAの過失の割合は,損害額の3割とするのが相当である。

【コメント】  (クリックすると回答)


金額からすると,大きな金額ではありませんでしたが,高裁まで争われた事件です。
そして,高速出口の渋滞における事故というと,事故まで至らなくとも同様の経験をお持ちかと思います。

この様な場合に,過失割合はどの様に決めるのだろうかという素朴な疑問があります。

だが,判決(控訴審)は,Bの過失を7割としました。
その理由は,「本件事故の直接の原因がB車を発進させたことにあり,Bがその際に僅かにハンドルを右に切りさえすれば容易に避けることができたものであること」としています。
要するに,先に発進したBが状況判断を誤ったことに過失が大きい根拠を求めています。渋滞中であり,いつ接触するか分からない場合には,我慢が大切と言うことでしょうか。

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