固定時36歳給与所得者に現実収入を大きく上回る賃セ男性学歴計全年齢平均を基礎収入とする逸失利益を認めた判決です。

[基礎収入,賃金センサス,逸失利益,高次脳機能障害]

会社員(男・受傷時=固定時36歳,四肢麻痺・膀胱直腸障害・知的レベル3歳程度の高次脳機能障害等で1級3号)
事故年度の現実収入は,転職前の会社で179万円余,転職後の会社で257万円余の合計437万円余であったが,賃セ男性学歴計全年齢平均555万円とした(大阪地判平成16年9月10日)
なお,自動車保険ジャーナル・第1582号(平成17年3月24日掲載)

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【事案の概要】
1 事故日時 
平成12年12月8日午前7時54分ころ
2 事故状況
原告乗用車運転中、被告運転の大型貨物車が同一方向から原告車両を追い上げ、追い越そうとした際、原告車両後部に被告車両左前部が衝突、その衝撃により原告車両は道路左端のガードロープ等に衝突
(傷害内容) 重症脳挫傷、急性脳腫脹、外傷性くも膜下出血、頸髄損傷、頸椎骨折等
3 治療状況
入院662日
4 後遺障害
四肢麻痺・膀胱直腸障害・知的レベル3歳程度の高次脳機能障害等で1級3号
【判決の趣旨】
原告太郎は,平成12年5月31日(当時34歳)に西日本住器を退職して同年6月1日にジェイ・イ・エスに就職し,平成12年中の収入は西日本住器で179万9,000円,ジェイ・イ・エスで257万9,000円であり,その収入で原告晶子,同真琴及び同琴音を扶養していたことが認められるところ,ジェイ・イ・エスでの収入は就職してから約6か月間のものであり,転職後間もない時期に本件事故が起きたことを考慮すると,同入の逸失利益算定に当たっては,平成14年度賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計の男子労働者全年齢平均年収額である555万4,600円を基礎とするのが相当である。したがって,症状固定時(当時36歳)から67歳までの就労可能年数31年間の逸失利益は,以下のとおり8,661万1,766円となる。
 (算式) 5,554,600円×15.5928(31年のライプニッツ係数)=
86,611,766円
【コメント】
給与所得者の基礎収入(後遺障害及び死亡の逸失利益)の算定について,特に,どのような場合に賃金センサスが用いられるのか問題となるところです。
まずは,次のようにされています。
原則として事故前の収入を基礎として算出する。
現実の収入が賃金センサスの平均額以下の場合,平均賃金が得られる蓋然性があればそれを認める。
若年労働者(事故時概ね30歳未満)の場合には,学生との均衡の点もあり全年齢平均の賃金センサスを用いるのを原則とする。

本件は,比較的若い給与所得者でしたが,30歳未満の若年者ではありません。そして,転職後間もない時期に本件事故の被害に遭っています。そのために,437万円余と賃金センサスの平均額以下でした。
判決は,賃セ男性学歴計全年齢平均を採用しました。その理由は以下のとおりです。
1 原告晶子,同真琴及び同琴音(原告の妻子)を扶養していたこと
2 ジェイ・イ・エスでの収入は就職してから約6か月間のものであり,転職後間もない時期に本件事故が起きたこと
これらから,本件事故がなければ,平均賃金に達した高度な蓋然性があると判断したのです。

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