固定時54歳の公務員について,60歳定年までは現実収入,定年後67歳までは,その8割を逸失利益の基礎収入とした判決です。

[公務員,基礎収入,定年退職,賃金センサス,逸失利益,郵便局]


公務員(男・受傷時53歳,固定時54歳,四肢麻痺,知覚脱失,膀胱障害で1級3号)
原告は,郵便局に27年間勤続し,本件事故前年の年収は979万9,089円で定年は60歳であるが,既に管理職であった。

その後遺障害逸失利益を算定するに当たっては,

症状固定から60歳まで(6年間)は,本件前年の収入である979万円余を基礎収入とし,その後67歳までは,その80%に当たる783万円余を基礎収入とするのが相当である。

大阪判平成15年7月4日

自動車保険ジャーナル・第1529号(平成16年2月19日掲載)

続きを読む

1 事故日時 
平成13年1月13日午後9時10分ころ
2 事故状況  
片側2車線から1車線に減少となった地点の交差点で信号待ち一時停止した被告運転の小型貨物車に原告運転の自動2輪車が転倒して衝突
(傷害内容) 脊髄損傷
3 治療状況
入院246日間→入院中に症状固定
4 後遺障害
四肢麻痺,知覚脱失,膀胱障害で1級3号
5 争点と関連する事実
原告は,本件事故当時,大阪松原郵便局集配営業課長の要職にあり,本件事故前年である平成12年の年収は979万9,089円でした。

【判決の趣旨】
原告は,54歳の平成13年9月13日当時,頸髄損傷による四肢麻痺,知覚脱出,膀胱障害の後遺障害等級1級3号に該当する障害を後遺して症状固定と診断されたところ,上記クに認定の事実と原告本人尋問の結果によれば,原告は,郵便局に27年間勤続し,本件事故前年の年収は979万9,089円であったこと,
定年は60歳であるが,既に管理職であったことから,本件事故に遭遇しなければ,65歳までは関連の仕事に従事することができたことが認められる。
以上の事実によれば,原告の後遺障害逸失利益を算定するに当たっては,症状固定から60歳まで(6年間)は,本件前年の収入である979万9,089円を基礎収入とし,その後67歳までは,その80%に当たる783万9,271円を基礎収入とするのが相当である。
 よって,原告の後遺障害逸失利益は,次のとおり,8,359万0,147円となる。
 979万9,089円×1×5.076=4,974万0,175円
 783万9,271円×1×(9.394-5.076)=3,384万9,972円
 4,974万0,175円+3,384万9,972円=8,359万0,147円

【コメント】この判決例は,60歳定年後の67歳までの基礎収入に関するものです。現実収入の80%で783万円余としています。
この点に関して,次のような考え方があり有力と思われます。
「67歳までの期間を通じて同一額を基礎収入として逸失利益を算定し,定年退職を考慮しない代わりに,退職金も考慮しないことが多いが,定年までの収入が相当高額で,定年後はそれだけの収入を維持することが難しいと見られる場合には,定年後の期間については,賃金センサスの被害者の属する性の学歴計60ないし64歳の平均賃金又は現実収入の一定割合を基礎収入として採用することがある<。」(交通損害関係訴訟 八木・佐久間 青林書院 p77 )。
本件では,平成15年男性学歴計60ないし64歳の平均賃金は,441万円です。
783万円余というのは,それとの比較からすると「高額」といえます。現実収入から,賃金センサス年齢別までは落差があるので,「ほどよいところ」で現実収入の80%で783万円余としたのでしょうか。

交通事故における賠償や過失判例をご覧いただき、さらなる疑問にも弁護士として明確にお応えいたします。お気軽にご相談ください。

0120-56-0075 受付時間:月~金(土日祝日も対応)午前9時30分~午後10時

フォームからのご相談予約はこちら

ページの先頭へ戻る