骨癒合が良好であったとしても,神経症状が残存しうるとして12級13号を認めた判決です。

[ティネル徴候,骨折,骨癒合,ティネルサイン,12級]

   福岡高裁 平成28年1月28日判決(確定)
   事件番号 平成27年(ネ)第465号 損害賠償等請求控訴事件
   1審 福岡地裁 平成27年3月26日判決
   事件番号 平成25年(ワ)第221号 損害賠償等請求事件
   <出典> 自保ジャーナル・第1970号
        (平成28年7月28日掲載)

【事案の概要】
46歳有職主婦が,横断歩道を歩行横断中,乗用車に衝突され後遺障害を残したとする事案です。
判決は,「残存した後遺障害(左膝窩部から左腓骨近位端にかけての疼痛,左足背筋力の低下及び左足背部の感覚減退等の神経症状)については,左腓骨骨折の後遺障害として単に医学的に説明可能であるにとどまらず,他覚的所見によって医学的に証明されているものとして,自賠法施行令別表第二の12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)に該当するものと認める」とし,

基礎収入を平成22年賃金センサスによる女子労働者・学歴計の年間収入額である345万9,400円,労働能力喪失率を14%とした上,労働能力喪失期間については,症状に波があり回復の可能性もあることから10年間として,後遺障害逸失利益を認定したものです。

【判決のポイント】
骨癒合が良好とされても,神経刺激が完全になくなるとは限らず,また,損傷した神経が回復するものではないから上記で述べた左腓骨神経に係るティネルサインないし圧痛や左EHL(長母趾伸筋)の筋力低下などの神経症状が改善と増悪を繰り返しながら継続するというのは,他の多くの患者にも見られる,臨床医学上通常の事態である。

【コメント】
骨折部位ないしその周辺に疼痛を残した場合に,12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)への該当が認められることが多いといえます。
しかし,骨癒合が良好となっている場合に,疼痛の原因つまり他覚的所見の存在が争いとなることがあります。
本件は,骨癒合が良好であったとしても神経刺激が完全になくなるとは限らないとしています。
その上で,ティネルサインあるいは筋力低下などにより他覚的所見となるとしたものです。

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