Q.むち打ち(頚椎捻挫)の中でバレー・リュー(ルー)症候群というのはどういうものですか。
むち打ちの中でも自律神経失調の状況になるものです。
最近の傾向としては,診断そのものがなされないようです。
仮に傷病名として表記されていたとしても,後遺障害等級に影響は,まず考えられません。
1 頚部損傷の中にはどのようなものがありますか。(クリックすると回答)
一般に広くむち打ち(症)と呼ばれますが,頚部の損傷には3タイプがあります。
①頚椎捻挫型
②神経根症型
③脊髄症型(脊髄損傷型)
一般にむち打ち症と呼ばれているものの多くが,この①に属しています。
バレー・リュー(ルー)症候群は,この3タイプとは別のものである理解されていますが,他のタイプと合併する例もあるようです。
2 バレー・リュー(ルー)症候群とは何ですか。(クリックすると回答)
一般的には,症状の原因が自律神経(交感神経・副交感神経)のうちの主として交感神経の異常に原因があるとされるものです。
自律神経は,交感神経・副交感神経のバランスで内臓の動きをコントロールしています。
そのコントロールが効かなくなっているという理解です。
そこで,両神経間の機能のバランスが崩れてしまうと内臓機能の失調を来すことになり「自律神経失調症」と呼ばれる症状になってしまいます。
むち打ちでも頚部を構成する筋肉・靱帯・関節包の損傷で生じてくる痛み,刺激が脊髄に達して反射性に交感神経を興奮させることにより,血流の低下が生じて筋肉・内臓の調節が乱れてしまいます。
症状としても,痛みだけではなく,筋肉のこり,耳鳴り,めまい,胸がドキドキするなど様々な訴えとして出てきます。そして事故の被害というストレスが自律神経(交感神経・副交感神経)を通じて,全身の内臓に間接的な機能失調をもたらすことがあります。
バレー・リュー(ルー)症候群とは,頚部の損傷による自律神経の直接的かつ間接的な刺激により発症するのではないかという理解が現在なされています。
3 バレー・リュー(ルー)症候群の症状は,どのようなものですか。(クリックすると回答)
刺激が脊髄に達して反射性に交感神経を興奮させることにより,血流の低下が生じて脳幹部に機能不全が起こります。
脳幹部には,眼・耳・のど・顔面筋を支配する神経細胞集団があるために,これらの器官に関連する症状が一体として出てきます。
具体的には,
①内耳の症状
めまい,耳鳴り,耳づまり
②眼の症状
眼のかすみ,眼の疲れ,視力低下(いわゆる眼精疲労)
③心臓の症状
心臓部の痛み,胸騒ぎ,息苦しさ
④咽喉頭部の症状
かすれ声,嚥下困難,喉の違和感
⑤頭痛,頭重感
4 後遺障害としては,どのように評価されていますか。(クリックすると回答)
バレー・リュー(ルー)症候群は,自覚症状中心であり,その訴えも多彩なものがあります。
自律神経の直接的かつ間接的な刺激により発症するというメカニズムの理解が正しいとしても,その状態を画像あるいは他覚的所見で明らかにすることは困難と言うよりも不可能と言えます。
10年以上前には自賠責の等級認定では非該当とされたものが裁判では12級に認定される例がありました。
しかし,最近では,そのような判決例を知りません。また,医師の診断書でも,まず見かけることはなくなりました。
仮に,傷病名として掲げられていたからと言って,それが後遺障害等級認定に影響するとか,あるいは,裁判所は認めると言ったことは考えられません。
むしろ,不定愁訴ということで,心因性のものを疑われるおそれもあり得ます。