Q.高齢者の死亡慰謝料は,若い人より少ないのですか。最低線はどの位ですか。

[慰謝料,死亡,高齢者]

A.

裁判例を見ても若い人に比べて少ないという傾向があることは否定できません。

1 高齢者の死亡慰謝料に対する考え方には,どのようなものがありますか。   (クリックすると回答)


確かに(東京地裁民事交通部の)多くの裁判官が,お年寄りには2000万円を下回る慰謝料を認定し,子供さんについては,原則として2000万円を上回る慰謝料を認めていたのが実情です。
(ぎょうせい 「新しい交通賠償論の胎動」p13元東京地裁民事交通部部長河邊部長)


しかし,他方で高齢者は,若い人に比べて逸失利益は,概して低めであり,その上で死亡慰謝料も低くしてしまうと,遺族からすると,トータルとして命の値段としては,いかにも低いという印象がある。これは不当とも言えます。

人生を享受することなく命を奪われた子供さんへの慰謝料を増額することには異論がない。その点と,高齢者の慰謝料を下げることとは別の問題だと言うべきです。
したがって,すべて低くすると言うことで固まっているわけではありません。

2 高齢者の死亡慰謝料について考慮されている事情は,どのようなものがありますか。  (クリックすると回答)


裁判例としては,2000万円以上とする場合も,2000万円未満とする場合も,一切の事情を考慮してという表現のみのことが多くて,結論に至る事情は明らかではないことが多いです。
一つの方向性の範囲でお示しします。

(1)被害者の年齢
しかし,年齢が絶対的基準となるものではありません。

(2)家族構成
被害者と同居する家族がいた場合には,家族内における被害者の役割を考慮して慰謝料をプラスする事情となります。
しかし,逆に,同居する家族がいなかったからといって,それをマイナスにする事情とする裁判例は少ないとされています。
なお,一人暮らしである場合には,子と同居予定であったとか,近隣に住んでいて孫の世話もしていたという場合にはプラス評価する事情になると思われます。

(3)仕事をしていたかどうか
この点も,仕事をしていたことをプラスの事情とした裁判例もありますが,仕事をしていなかったからといってマイナスの事情と評価されるわけでもありません。

(4)原告と死亡した被害者との関係
通例は,配偶者あるいは子が原告となるために,余り問題となりません。
しかし,兄弟姉妹で同居しておらず,どちらかというと生前は疎遠であった場合に,マイナスの事情として評価した裁判例があります。

3 全国の裁判例の水準はどうでしょうか。  (クリックすると回答)


2000万円から2200万円の範囲が過半数であり,1800万円以上まで広げると,それが圧倒的であると言われています。

事案の複雑な原因から1800万円未満のものもありますが,極めてまれであるとされています。

従って,裁判となった場合には,1800万円が最低線であるといって良いと思います。

続きを読む

4 東京地裁の水準は,どうでしょうか。  (クリックすると回答)


理由をはっきり示さないで判決することが多いようですが,ほとんどが,1800万円から2400万円の範囲に分布しており,中でも訴訟基準額の2000万円が多いようです。

しかし,1800万円未満のものも,かなりあり,1600万円とするものも少なからずあるようです。

5 自賠責保険基準では,どうですか。  (クリックすると回答)


被害者である死亡者本人分として350万円,請求権者(通常は相続人)1名の場合は,それに550万円,2名の場合は,650万円,3名以上の場合は750万円を加算します。
被害者に扶養家族がいる場合には,さらに200万円を加算します。

すると,家事従事者の高齢者女性の場合では,最大でも1100万円ということになります。

6 対応としては,どうしたらよいのでしょうか。 (クリックすると回答)


高齢者が被害者となる事故は子どもの事故と並んで多くあり,増加傾向にあります。
特に,高齢者は過失あるいは逸失利益について争点となるものが多くあります。

自賠責保険基準の低さから見ると,訴訟をすべき事案がかなりあると言えます。

しかし,その場合にも漫然と2000万円の死亡慰謝料は黙っていても裁判所が認めてくれるとは限りません。
できるだけプラスの事情を丹念に主張して,それに関する証拠を提出することが肝要だと思います。

むち打ちや脱臼、脊髄損傷など、幅広い疑問にもお応えします。ご相談は埼玉の弁護士、むさしの森法律事務所にご連絡ください。

0120-56-0075 受付時間:月~金(土日祝日も対応)午前9時30分~午後10時

フォームからのご相談予約はこちら

ページの先頭へ戻る