Q.肩腱板損傷の後遺障害(後遺症)はどうなりますか。
肩関節の外転の制限がある場合には,10級,12級となる可能性があります。
肩腱板は,肩甲帯(肩甲骨と鎖骨)から始まり上腕骨に付いている棘上筋,棘下筋,小円筋,肩甲下筋の4つのから成り立っています。
肩腱板損傷が最も起こりやすく,最も重大な損傷は,4つの筋の中でも上腕の外転を司る棘上筋に関するものです。
肩腱板は,肩甲帯(肩甲骨と鎖骨)から始まり上腕骨に付いている棘上筋,棘下筋,小円筋,肩甲下筋の4つのから成り立っています。
肩腱板損傷が最も起こりやすく,最も重大な損傷は,4つの筋の中でも上腕の外転を司る棘上筋に関するものです。
転倒などで肩へ直達外力が加わった場合に棘上筋が断裂することがあります。
棘上筋に比べて他の3つの筋の断裂はまれであるとされています。
なお,棘上筋損傷についても若年者に発生することはまれであり,40歳を過ぎてからは腱板終末部での変性が始まり,そのために損傷を受けやすくなるとされています。
従って,事故との因果関係が争点になることもあります。
2 治療方法としてはどのようなものがありますか。 (クリックすると回答)
不全損傷であれば,ほとんどが保存的治療ですんでしまい治癒することも多いとされています。
しかし,棘上筋が完全断裂してしまうと観血的治療が必要です。
その場合も断裂してしまった棘上筋を単純に縫合することは困難とされています。
その場合によく行われるのはマクローリンMacLaughlin法です。
これは,残存している腱を引き出して上腕骨頭に作った骨溝に埋め込む手術です。
3 後遺障害(後遺症)となることはありますか。 (クリックすると回答)
肩腱板損傷でも棘上筋損傷が多いこと,そして棘上筋が肩関節による上腕の外転に大きく関わっていることから,肩関節の機能障害(可動域制限)を後遺障害として残す可能性があります。
肩関節の機能障害(可動域制限)を判断する主要運動は,屈曲,外転・内転です。
なお,伸展は参考運動です。
主要運動のいずれかが,可動域制限を充たすことにより,後遺障害に該当します。
なお,外転・内転とありますが,外転の可動域が0-180度であり,内転は0度であることから外転・内転といっても,実質は外転と言うべきです。
すると肩関節の外転が健側に比べて患側が
可動域2分の1以下=1関節の著しい機能障害→10級11号
可動域4分の3以下=1関節の機能障害→ 12級7号
例えば,患側80度で健側180度ならば80度<180度÷2=90度ですから
2分の1以下として10級11号に該当します。
なお,肩関節の外転(側方挙上)参考可動域角度は180度です。
前を向いて腕を水平にあげられるのが180度です。
あるいは機能障害がなくとも受傷した部位に疼痛が残れば12級13号もしくは14級9号に該当します。
4 後遺障害認定のポイントはありますか。 (クリックすると回答)
肩腱板損傷の傷病名と外転の可動域制限が角度で示されていれば十分かというと,そうではありません。
損傷と言っても,腱板(ローテーターカフ)断裂を示さなくてはいけません。
また,その前提として方を含む部位の打撲さえ初診段階の診断書に現れていなければ中高年者では,単なる五十肩で済まされる危険性があります。
断裂については,4つの筋のどこかであるか損傷箇所を示すテストがあり,また大きな断裂であれば単純X線写真でも骨頭のずれとして映りますが,多くは超音波あるいはMRI画像で所見を示す必要があります。
また,どの筋の損傷かを担当医に後遺障害診断書で示してもらうようにして下さい。
肩腱板は,棘上筋,棘下筋,小円筋,肩甲下筋の4つのから成り立っています。
これらの肩に関する筋は,肩甲帯(肩甲骨と鎖骨)から始まり上腕骨に付いています。
(上腕骨=肩からひじ関節まで伸びる長管骨)
肩腱板は,ローテーターカフ(rotator cuff (of shoulder) 回旋筋腱板)とも言われ上腕骨の周囲を取り囲むようにして付いており,上腕骨を回旋させるものです。
これらの筋の腱は関節包と密接に癒合して平均6~7㎜の厚さを持ち強力で血行にも富んでいます。
肩腱板を構成するのは,棘上筋,棘下筋,小円筋,肩甲下筋です。
棘上筋は,上腕を外転させます。また,上腕骨頭を引きつけて,安定させる働きをします。
外転(側方挙上)する際に,60度から120度の可動域の範囲で上腕骨頭を肩甲窩に圧着させて支点の役割をしています。
腕をだらりと下げている際にも,棘上筋だけは緊張をしています。
そのために,肩関節安定のために絶えず緊張しており,ローテーターカフの中で最も損傷を受けやすいものです。
棘下筋は,上腕を外旋させます。
小円筋は,棘下筋を助けて,上腕を外旋させます。
肩甲下筋は,上腕を内旋させます。
その点から,肩関節の主要運動である外転に関しては棘上筋が主役であり,その他の3つの筋肉は補助的なものといえます。
外転と内転=体幹や手指の軸から遠ざかる動きが外転,近づく動きが内転です。
外旋=肩関節に関して,上腕軸を中心として外側へ回旋する動きが外旋です。
内旋=肩関節に関して,上腕軸を中心として内側に回旋する動きが内旋です。