Q.聴覚検査のリンネ法とウェーバー法とは何ですか。

[ウェーバー法,オージオメーター,リンネ法,伝音難聴,感音難聴,難聴]

A.

外耳より入った音刺激が大脳側頭葉聴野に到達する経路の内,どの部位に病変があっても難聴という症状として出現します。
難聴とは文字通り,入ってくる音が聞き取りにくいことを意味していますが,聴力レベルが一定以下になった場合が後遺障害の対象となる「難聴」です。


ウェーバー法・リンネ法とは,いずれも音叉による聴覚検査法です。
難聴かどうか,いずれの難聴であるかの簡易にスクリーニングできるものです。

しかし,あくまでも診断,治療のための簡易検査です。
後遺障害としての認定方法としてはオージオメータの測定が,必要なので注意しましょう。



1 リンネ法とウェーバー法 (クリックすると回答)

どちらも,音叉による難聴の簡易な検査方法です。

リンネRinne法とは,振動させた音叉を乳様突起(側頭骨の後下部,いわゆる「えら」)の上におき振動音が消えたあと
音叉をはずして耳孔(耳の穴)4~5㎝のところに置きます。
つまり,音叉をえらに当てて,音が聞こえなくなったとして,その後に耳の穴の近くに起きます。
そしてなお振動が聞こえるかどうかを検査するのです。
聞こえる場合には正常でリンネ陽性です。
聞こえなくなると,リンネ陰性です。

ウェーバーWeber 法とは振動させた音叉を前額部の中央にあて,振動が左右の耳のどちらに強くひびくかを聞きます。
正常の場合には両側同じようにひびきます。

伝音難聴であれば,障害側に大きく聞こえます。
内耳に達した音のエネルギーが閉じ込められて外界へ逃げないからです。

感音難聴であれば,健側に大きく聞こえます。
音のエネルギーが障害側の内耳機能の低下のために聴こえ難く相対的に健側に大きく聞こえるからです。

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まとめると
伝音難聴であれば,ウェーバー法で患側に大きく聞こえリンネ陰性です。

感音難聴であれば,ウェーバー法で健側に大きく聞こえリンネ陽性です。

しかし,後遺障害としては認定材料とはなりません。難聴の疑いとして次のステップに進むためのものと理解をしてください。

2 伝音難聴,感音難聴とは何ですか。 (クリックすると回答)


①伝音(性)難聴 conductive deafness
外耳,中耳の障害による難聴で空気振動が十分に伝達できない状態になっていることによる難聴です。小さいな音が聞こえにくいだけで,言葉の明瞭さには余り影響は与えません。
②感音(性)難聴 perceptive deafness
内耳,聴神経,脳の障害による難聴であり,音が聞こえにくいだけでなく,音が歪んだり響いたり,言葉がはっきりと聞こえない状態です。
これは,原因等により内耳性(迷路)難聴,後迷路性難聴に分類され,後迷路性難聴は,蝸牛神経から脳の障害によるものであり,その原因箇所により末梢神経性難聴・脳幹性難聴・皮質性難聴に分類されます。
頭部外傷の場合で難聴を疑うときには,耳鼻科よりもむしろ脳神経外科医と相談されるなどして,できれば大学病院での検査をすべきでしょう。

③混合(性)難聴 mixed deafness
伝音性難聴と感音性難聴の両方の原因を持つ難聴を言います。
純音聴力検査では,骨導聴力,気導聴力ともに低下しますが,気導聴力がより低下します。

3 オージオメーターによる検査とはどのようなものですか。(クリックすると回答)


オージオメーターによる純音聴力検査 Pure Tone Audiometryとは,次のようなものです。
オージオメーターは,各種の純音を電気的に発振し,それぞれの音を強めたり弱めたりすることができます。その聞こえ方を分析して検査するものです。
これには,a)骨導聴力検査 b)気導聴力検査があります。

なお,純音聴力検査は,3回の検査の平均をとることになっていますので,必ず3回検査を受けないといけません。また,聞こえる音がどの位のdB(デシベル)であるかにより示されます。

a)骨導聴力検査は,
振動板を耳後部(乳突部)あるいは額に当て,頭蓋骨を通って直接内耳に達する経路で聞こえを測定する方法です。
これにより外耳から脳中枢までの聴覚系における難聴の程度を調べるものです。

b)気導聴力検査は,
レシーバーから出た音が,中耳を通って内耳に入る経路の空気中を伝わってきた音がどの程度聞こえるかの検査です。

純音聴力検査では,伝音性難聴は,骨導聴力が正常で,気導聴力が低下します。
純音聴力検査では,感音性難聴は,骨導聴力,気導聴力ともに低下します。
純音聴力検査では,混合性難聴は,骨導聴力,気導聴力ともに低下しますが,気導聴力がより低下します。

4  聴力障害の後遺障害等級はどうなっていますか。 (クリックすると回答)


障害等級は聞こえる音の領域と明瞭度との組み合わせで決められます。なお,1耳のみで40dB未満は該当しません。

【1耳】

9級9号
1耳の聴力を全く失ったもの=聴力が90dB以上であること(90dB以上の音でないと聞くことができない)

10級6号
1耳の聴力が耳に接しなければ大声を回することができない程度になったもの=聴力が80dB以上~90dB未満

11級6号
1耳の聴力が40㎝以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの=聴力が70dB以上~80dB未満,あるいは,50dB以上~70dB未満+最高明瞭度50%以下

14級3号
1耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することが困難である程度になったもの=聴力が40dB以上~70dB未満

【両耳】
4級3号
両耳の聴力を全く失ったもの=両耳とも聴力が90dB以上,あるいは,80dB以上~90dB未満+最高明瞭度30%以下

6級3号
両耳の聴力が耳に接しなければ大声を回することができない程度になったもの=両耳とも聴力が80dB以上~90dB未満,あるいは,50dB~80dB未満+最高明瞭度30%以下

6級4号
1耳の聴力を全く失い,他耳の聴力が40㎝以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの=1耳が90dB以上+他耳が70dB以上~80dB未満

7級2号
両耳の聴力が40㎝以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの=両耳とも聴力が50dB以上~70dB未満+最高明瞭度50%以下~30%超

7級3号
1耳の聴力を全く失い,他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの=1耳が90dB以上+他耳が60dB以上~70dB未満

9級7号
両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの=両耳とも聴力が60dB以上~70dB未満,あるいは,50dB以上~60dB未満+最高明瞭度70%以下~50%超

9級8号
1耳の聴力が耳に接しなければ大声を回することができない程度になり,他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの=1耳が80dB以上,他耳が50dB以上~60dB未満

10級5号
両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの=両耳とも聴力が50dB以上~60dB未満,あるいは,40dB以上~50dB未満+最高明瞭度70%以下

11級5号
両耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することが困難である程度になったもの=両耳とも聴力が40dB以上~50dB未満

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