Q.交通事故の物損(自家用車)としての代車を使用していますが,その期間はいつまでですか。

[代車,弁護士,物件事故,物損事故,示談代行,赤い本]

A.

物損事故の場合に,代車がいつまで使用できるかについて争いが多いとされています。

一般的には,いわゆる赤い本などでは,
「相当な修理期間または買換期間中,レンタカー使用等により代車を利用した場合に認められる。

修理期間は1週間ないし2週間が通例であるが,部品の調達や営業登録等の必要があるときは長期間認められる場合もある」とされています。

しかし,現実には,なかなか複雑な問題が生じます。

いわゆる赤い本(交通事故損害賠償額算定基準2003年版p344以下来司直美裁判官講演録より)

1 相手方保険会社のアジャスターが,自分の車を見に来ないでいたために,修理に着手できないでいた期間はどうなりますか。   (クリックすると回答)


相手方保険会社のアジャスターとは,物損担当の技術調査員を一般的に言います。
そのアジャスターが,車両の損害を見て修理見積もりを出して,損害額の評価をいたします。

相手方保険会社としては物損の示談代行を行う一環として,修理金額あるいは,経済的全損であるか否かについて説明義務を負うものと考えられます。
したがって,理由はともかくも,そもそも被害車両を見に来ないでいたということであれば,その期間については,代車を提供する期間に含めるべきであると言えます。
ただし,1,2週間ならともかくも,それを超えても,何の連絡さえも無いという場合に, 被害者側としても,それに便乗していたとされないために,相手方保険会社に督促をすべきです。
それをしないでいた場合には,代車使用期間として認められない恐れがあります。

2 相手方保険会社と部品交換が必要かどうかなどの修理方法の意見が合わずにいたため,修理に着手できないでいた期間はどうなりますか。  (クリックすると回答)


修理方法については,今後に機能的あるいは美観的な損傷が残る心配もあり,また被害者ですから,あなたの方にも相当な検討期間が基本的に与えられており,それに必要な代車の使用期間も認められていると考えます。
特に,相手方保険会社のアジャスターとして修理方法についても,説明義務があると解釈されますから,十分な説明を受けて検討をすべきだと考えます。

しかし,相手方保険会社のアジャスターが,誠実に説明をしていると考えられるのに対して,あなたの要求が現実からかけ離れている場合には,残念ながら,いわゆるゴネていると裁判所からも評価されて,その期間の代車使用について正当なものではないとされることになります。

3 後で,経済的全損だと言われたのですが,保険会社からは,何の連絡も無かったので,自分は修理するつもりでいたため,買い替えの注文を出さないで修理をしていた期間はどうなりますか。
  
(クリックすると回答)


経済的全損となると修理代金は出ないですから,合理的な行動としては,買い替えをすべきです。その場合には,買い替えに必要な期間に代車の使用期間も限定されます。
問題は,保険会社として,経済的全損であるという情報を被害者側に提供したかどうか,あるいは,被害者側として,経済的全損であると知るべきであったかどうかです。
その場合に,保険会社が電話にしても経済的損損であるということを伝えていたとなれば,被害者側がそれを納得していなかったかどうかは問題となりません。
したがって,その場合には,修理することは,リスクを承知で行ったということになります。

「何の連絡も無かった」ということが,全く車を見に来なかったとか,あるいは,見たことは見たとしても,その結果を口頭でも書面でも伝えなかったとなると,経済的全損であると理解するだけの情報が無かったことになり,被害者側の修理を依頼した期間も代車の相当期間となる可能性があります。
ただし,その場合でも修理金額が賠償額となることはなく,残存時価額が賠償額です。つまり経済的全損は変わりありません。
もし,「修理金額の方が時価額よりも大きい」とは言われたとか,そのような資料が郵送されたものの,「全損」と言うことをはっきり言われなかったということであったとすれば,情報はその時点で与えられていたことになります。
その場合には,経済的全損であると被害者側は判断すべきであったことになります。
すると,修理費用を請求できないだけではなく(賠償額は残存時価額となります。),修理に要した期間の代車使用は認められないことになります。

4 修理費用と時価額の大小関係が微妙であったため,修理をするか,経済的損損として買い換えるかどうかを検討していた期間はどうなりますか。  (クリックすると回答)


3と,似ていますが,修理費用と時価額の情報はあるのですが,大小関係が微妙というのは,修理方法あるいは,時価額のデータによっては,いずれの可能性もあるということです。この場合には,判断に悩むことは当然とも言えます。
したがって,相当な検討期間が認められ,それに対応する代車使用期間も認められると考えられます。
そして,それは保険会社から,どの程度の説明や情報が提供されていたかとの相関関係になると考えられます。

5 人身事故扱いとなったため,車両が警察に留置されてしまっていた期間はどうなりますか。  (クリックすると回答)


これは,やむを得ないものとして認められると考えられます。

むち打ちや脱臼、脊髄損傷など、幅広い疑問にもお応えします。ご相談は埼玉の弁護士、むさしの森法律事務所にご連絡ください。

0120-56-0075 受付時間:月~金(土日祝日も対応)午前9時30分~午後10時

フォームからのご相談予約はこちら

ページの先頭へ戻る