Q.眼の調節機能障害とはなにですか。その後遺障害等級はどうですか。

[11級,ジオプトリー,後遺障害,水晶体,,瞳孔,調整機能,12級]

A.



両眼の眼球に著しい調節機能障害を残すものは,11級1号,
1眼の眼球に著しい調節機能障害を残すものは,12級1号となります。
後遺障害に該当すると,その等級に応じた
労働能力喪失(リンク)による逸失利益(リンク)及び慰謝料(リンク)が認められます。

1 眼球の構造とは (クリックすると回答)

眼球は,ほぼ直径約24㎜の球形です。眼球壁は3つの膜から成り立っています。
外膜・中膜・内膜です。外膜は角膜と強膜からなっています。
中膜は虹彩・毛様体・脈絡膜からなっています。内膜は網膜です。
外膜は,眼球内容を保護しています。中膜は,血管と神経の通路となっています。虹彩は,その中央にある瞳孔を拡大あるいは縮小して眼球に入る光の量を調整します。
毛様体は,水晶体を支持してその弯曲を調節します。脈絡膜は,外部からの光を遮断します。内膜の網膜は,眼球の最も重要な組織です。
眼球の内容は,房水・水晶体・硝子体です。水晶体は凸レンズです。
虹彩から入った光は,水晶体で屈折されて硝子体を通り網膜上で像を結びます。
眼の調節機能に関するのは,水晶体と毛様体です。

2 眼の調節機能とは(クリックすると回答)

調節とは,水晶体の屈折力が増すことで,眼全体の屈折力が増して近くの物体が網膜に明瞭な像を結ぶ機能を言います。
要するに,水晶体が膨らむことで近くの物体がよく見えることを言います
虫眼鏡で小さいものを拡大してみる状態を想像してみて下さい。

毛様体は水晶体を支持していますが,毛様体中の輪状筋が収縮すると水晶体がその弾性から前に膨らんで厚みを増して屈折力が増加して近くのものが見えるようになるのです。
逆に輪状筋が弛緩すると弾性から水晶体は扁平となり遠くのものに焦点が合ってよく見えるのです。

3 眼の調整域・調節力とは(クリックすると回答)

眼の調節を休んで調節を全くしないときに,網膜の中心窩に像を結ぶ外界の点を遠点,逆に最大に調節したときに,網膜の中心窩に像を結ぶ外界の点を近点といいます。
遠点-近点の範囲を調整域といい,遠点-近点間距離をレンズの度(D:☆ジオプトリー)で表したものが眼の調整力です

4 ジオプトリーとは(クリックすると回答)

Dは,diopterの略で,Dは,レンズの焦点距離f(m)の逆数です。
D=n/f 
nは屈折率であり,空気中はn=1.0です。/は,分数を表す記号です。
すると,空気中では
D=1/fとなります。

調整力をA(D),遠点距離(遠点における外界の点との距離=遠点での焦点距離)をf(m),近点距離(近点における外界の点との距離=近点での焦点距離)をn(m)とすると,
A=1/n - 1/f   つまり,近点距離の逆数から遠点距離の逆数を引いたものが調整力となります(1/nとはn分の1,1を分子にnを分母にすると言う意味です)。
1/nは,nに対して分子と分母を入れ替えた逆数となります。)。
それは,近点距離の逆数が近点の屈折力であり,遠点距離の逆数が遠点の屈折力であるから,近点と遠点の屈折力の差が調整力として示されるからです。

例えば,近点距離25㎝(0.25m),遠点距離1mであるとすると,
A=1/0.25-1/1=4-1=3となります。

年齢とともに,水晶体の弾性が低下して調整力は減退します。いわゆる老眼です。
調整力と年齢との関係は,以下のとおり5歳毎の年齢別に基準値があります。
この場合に,例えば40歳とは40歳から44歳までの者に対応するものとして取り扱われます。なお,年齢は,症状固定時の年齢です。

 年齢  15歳  20歳 25歳  30歳  35歳  40歳  45歳  50歳  55歳  60歳  65歳 
 D  9.7D  9D 7.6D 6.3D  5.3D  4.4D  3.1D  2.2D  1.5D  1.35D  1.3D 

5 眼球に著しい調節機能障害を残すものとは(クリックすると回答)

(1)眼球に著しい調節機能障害を残すものとは,調整力が通常の場合の1/2以下になったものを言います。

(2)両眼が受傷した場合は,比較するものがないために,上記にある標準値との比較により行います。
例えば,40歳で2.1Dであれば,標準値4.4Dの1/2は,2.2Dですから,それ以下と言うことで「著しい調節機能障害を残す」に該当します。

(3)受傷したのが1眼であって,受傷していない方の眼の調整力に異常がない場合には,その異常がない眼との比較により行います。

(4)受傷したのが1眼であって,受傷していない方の眼の調整力に既に異常がある,つまり健眼がない場合には,上記にある標準値との比較により行います。
なお,受傷していない眼の調整力が1.5D以下である場合には,実質的な調整の機能は失われているので後遺障害の対象とならないとされています。

そこで,一般的には,55歳以上であるときには,受傷していない方の
眼の調整力は,既に1.5D以下となっていることが多いことから後遺障害の対象にはならないと思われます。

6 水晶体喪失の場合はどうなるか(クリックすると回答)

外力が加わり毛様体が切れて,水晶体が脱臼して,水晶体を失い,人工水晶体となることがあります。
その場合にも現時点では,弾性のある人工水晶体はできておりませんから,調整力は失われます。
従って,同様に前記の基準に従って「著しい調節機能障害を残す」か判断されます。

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