Q.インプラントによる将来の治療が認められるのはどういう場合ですか。

[インプラント,インプラント矯正,将来の治療,歯牙障害,症状固定,補てつ]

A.

インプラント治療として必要な「あご骨」の固定性が無く将来の成長終了を待たねばならず,義歯に比べて健常な歯を傷つけないような有意性があるような場合です。
インプラントが優れているからと言って無原則に将来の費用が賠償として認められるものではありません。
判決例としては,いわゆる義歯とインプラントを比較しており,インプラントのメリットを認めつつも,賠償,しかも将来の費用として認めるためには,特に成長過程にある年齢であるかを重視していると言えます。

その他に,矯正治療費用,インプラントの耐用年数と再手術費用,インプラントメンテナンス費用が問題となります。

さらに,インプラントと後遺障害(後遺症)との関係をどのように考えるかという問題もあり得ます。


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1 (デンタル)インプラントとは

義歯が簡単には外れてこないように「あごの骨」に直接埋め込む人工の歯(人工歯根)のデンタルインプラントを単にインプラントと呼ぶのが一般的になってきました。
インプラントは適用を間違えると事故の危険性もありますが,一般的な義歯に比べて優れた点があるために,交通外傷でもよく用いられています。

2  どのような場合に将来のインプラント治療費用が認められるか

インプラントが優れているからと言って無原則に将来の費用が賠償として認められるものではありません。
判決例としては,いわゆる義歯とインプラントを比較しており,インプラントのメリットを認めつつも,賠償,しかも将来の費用として認めるためには,特に成長過程にある年齢であるかを重視していると言えます。

「抜歯当時13歳と成長過程にあるため,固定性の処置ができず仮歯を装着したこと,将来17,18歳になって成長が一応終了した時点で改めて固定性の処置をするようになること,原告は固定性の処置としてはインプラント治療を望んで」いることから(横浜地裁平成15年8月22日判決(確定)自動車保険ジャーナル・第1547号),
あるいは,
「義歯については異物感等が強く咀嚼力に劣る等の,同じくブリッジについては欠損歯の両側の歯を大きく削る必要がある等の各欠点に鑑みれば,いずれも原告の歯牙欠損の被害回復方法としては不十分であるから,インプラント治療が相当と言うべきである。」ことを理由としたものがあります(仙台地裁 平成24年2月28日判決(控訴中)自保ジャーナル・第1870号)。

他方で,69歳男子の将来のインプラント治療は「健康保険の適用のない処置であることから,一応部分義歯による補綴方法がなされて咬合不良等の本質的な不具合が窺われない本件においては,原告の損害は一応回復されたものとみざるをえず」と否定したものもあります(横浜地裁 平成22年6月15日判決(確定))。


3  矯正治療費用は認められるか

インプラント治療を実施する前提として矯正治療が必要であることが認められる(仙台地裁 平成24年2月28日判決)とされています。
インプラント治療は人工歯根を埋め込むことであり,インプラント矯正は,そのインプラントを用いた歯の矯正方法で別のものです。
この事件では事故後に不正咬合(かみ合わせが悪くなることです。)ともなったため,併せて矯正治療も必要となったものです。


4 インプラントの耐用年数と再手術費用はどうか

インプラントをすれば,永久に使えるものではないようです。
義足や義肢とおなじ人工物として耐用年数は20年とする判決例があります(仙台地裁 平成24年2月28日判決(控訴中)。
もっとも,その判決も10~15年が確実な耐用年数とする見解も紹介していますから,この耐用年数は事例によったり裁判官によっては変化する可能性はあります。


5 インプラントメンテナンス費用は認められるか

耐用年数を20年として,それは毎年のメンテナンスを前提とする考え方です(仙台地裁平成24年2月28日判決)。
耐用年数を20年とすることとの引き替えでメンテナンス費用を認めるように判決文は読めますが,20年よりも短い耐用年数を認めた場合にメンテナンス費用は否定されるのかは何とも言えません。


 将来のインプラントと後遺障害の関係は

歯牙欠損(歯牙障害)による後遺障害は「欠損によって補綴(ほてつ)」をした場合です。
従って,インプラントも補てつに該当はします。
しかし,将来のインプラント治療については,その治療費・矯正費用・メンテナンス費用そして何よりも再手術費用を請求する場合に後遺障害と併せて請求することが可能であるのか,肯定も否定も難しく今後の問題と思います。(もっとも後遺障害に該当するためには欠損した歯が3本以上必要です。)

それは,インプラントも補てつであり自分の「歯」ではないため,インプラントをすること自体で症状固定として後遺障害となり欠損した歯数に応じて後遺障害に該当すると言えます。
他方で,13歳なら18歳頃までと4,5年間はインプラントを待たねばなりません。13歳未満であれば,さらに期間は長くなります。
将来のインプラント費用を認めた後に,現実にインプラントをした時点で症状固定となり後遺障害となるのか,その間は消滅時効は進行しないのか,疑問は残ります。
さらに再手術をするとなると,その都度症状固定を繰り返すことになるのか,そうだとすると公平に見えても煩雑です。
また,理論的にも違和感があります。おそらく,判決例は,そのような煩雑となる後遺障害としてではなく,より良き治療と言うことでインプラントを位置づけしているように思えます。

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