Q.交通事故の後遺症を苦にして自殺をした場合の賠償範囲はどうなりますか。

[うつ,事故後の自殺,因果関係,寄与度,心因,最高裁平成5年9月9日,死亡,減額,素因減額,自殺]

A.

うつ病に罹患して,自殺をしたような場合には,相当因果関係があるとして死亡に対する損害賠償が認められる可能性があります。
ただし,その場合においては,賠償額の8割~6割を過失相殺の類推によって減額されます。

1 問題の所在は (クリックすると回答)

交通事故の被害者が,事故後に自殺をすることがあり得ます。事故と死亡との因果関係があるのかどうかが,法的な問題です。
自殺は,本人の選択です。
そのために,被害者自身の意思が関与するために,いわゆる相当因果関係が認められるかどうかが問題となります。

2 判例の流れは (クリックすると回答)

否定するものと,肯定するものとに分かれておりましたが,最高裁平成5年9月9日判決が一部(割合的に減額して)認める判決を出して,これが一つの先例的な意味を持つものとなっています。

3 最高裁平成5年9月9日判決とは (クリックすると回答)

最高裁平成5年9月9日判決は,以下の様なものです。
最高裁 平成5年9月9日判決
事件番号 平成5年(オ)第561号   
(2審) 東京高裁 平成4年12月21日判決        
事件番号 平成4年(ネ)第876号 同年(ネ)第2461号   
(1審) 東京地裁 平成4年2月27日判決        
事件番号 平成2年(ワ)第879号   
<出典> 自保ジャーナル・判例レポート第115号-No,2              

(原審) 第103号-No.3

【事案の概要】
妻子のある男性(事故当時44歳)が,正面衝突の事故に遭い頭部打撲・頚部打撲等を受傷し,後遺障害14級10号(当時の等級,現在の14級9号)を認定されたものです。
ところが,事故から3年7ヶ月後に自殺をしました。つ病に罹患したことから事故と自殺との相当因果関係が認められたが,被害者の心因的要因が寄与して損害を拡大したとされて,死亡損害の8割が減額されました。

【該当する判決部分】
本件事故により被害者が被った傷害は,身体に重大な器質的障害を伴う後遺症を残すようなものではなかったとはいうものの,本件事故の態様が被害者に大きな精神的衝撃を与え,しかもその衝撃が長い年月にわたって残るようなものであったこと,その後の補償交渉が円滑に進行しなかったことなどが原因となって,被害者が災害神経症状態に陥り,更にその状態から抜け出せないままうつ病になり,その改善をみないまま自殺に至ったこと,自らに責任のない事故で傷害を受けた場合には災害神経症状態を経てうつ病に発展しやすく,うつ病にり患したものの自殺率は全人口の自殺率と比較してはるかに高いなど原審の適法に確定した事実関係を総合すると,本件事故と被害者の自殺との間に相当因果関係があるとした上,自殺には同人の心因的要因も寄与しているとして相応の減額をして死亡による損害額を定めた原審の判断は,正当として是認することができ,原判決に所論の違法はない。

4 最高裁平成5年9月9日判決についての評価は (クリックすると回答)

(1)最高裁判決はの判断枠組みとしては,「相当因果関係説を前提として判断して,さらに過失相殺の法理を類推適用して減額する」というものです。

(2)その点では,判決・学説が様々であったものを整理した上で救済の途を広げたものと言えます。

(3)さらに,相当因果関係説で自殺することは特別事情と考えられますが,そうであれば予見可能性を必要とします。
ところが,原審(第1審も)は,要件としていません。
最高裁判決は「意識的にか,無意識的にかは定かではないが,予見可能性という言葉が用いられていないことに留意しておく必要」があります(概説交通事故賠償法第3版 藤村和夫外著 日本評論社p352)。

(4)ただし,「うつ病への罹患,うつ病による自殺という二つの因果関係を考えるものである。」そのため「便宜的な判断」となり「うつの外延が不明なのにも関わらず」裁判所は,「うつ病への罹患を認定しなければならなくなる。」として「うつ病を媒介項とする判断を一般的に要求することには疑問である」という見解も現職裁判官からも出されています(2003年3月初版 新裁判実務体系 交通事故損害訴訟法 青林書院p145 )。

むち打ちや脱臼、脊髄損傷など、幅広い疑問にもお応えします。ご相談は埼玉の弁護士、むさしの森法律事務所にご連絡ください。

0120-56-0075 受付時間:月~金(土日祝日も対応)午前9時30分~午後10時

フォームからのご相談予約はこちら

ページの先頭へ戻る