Q.将来の介護費用は,職業人介護の場合には,どのような点を考慮するのでしょうか。 また,金額の相場というのはあるのでしょうか。

[介護保険,介護費用,職業介護人,職業付添人,自宅介護]

A.

主に自宅介護で,職業介護人によるという,そもそもの必要性が認められるのかが問題となります。
被害者の年齢・家庭環境・介護内容等を考慮して判断されます。

金額の相場は,介護保険普及と共に形成されつつありますが,まだ流動的と言えそうです。

1 将来の介護費用とは何ですか。
将来の介護費用とは,後遺障害のために,被害者に治療が終了して症状固定となった後も,介護が必要な身体状況が残ったことにより生じる損害です。


2 被害者に対しての介護の分類はどうですか。
①介護される場所
自宅介護と施設内介護に分かれます。

②介護をする人
つまり付添人がどういう人かです。介護の担い手と言うことです。
近親者介護と,職業人介護(職業付添人による介護)とに分かれます。

果たして被害者の身体状況・環境等から職業介護人による介護が必要であるかが,まずは認められなければなりません。


3 職業人による介護における介護費用の相場ないし基準はありますか
(1)実務基準
いわゆる赤い本では,「医師の指示または症状の程度により必要があれば被害者本人の損害として認める。」として「職業付添人は実費全額。但し,具体的看護の状況により増減することがある。」とされています。

しかし,職業付添人は実費全額とあることから,現実に介護をして支払っている金額が,裁判所においてそのまま認められるものではないことに注意する必要があります。
(いわゆる赤い本2011年版下巻p13 山田智子裁判官講演録)

(2)裁判例の傾向
赤い本2004年版p337では,2003(平成15)年秋頃では職業付添人の場合,「1日あたり15000円程度までが通常と言えるようになってきています。」とされています。

ところが,その後,後遺障害1級,2級では,相当幅があるが,おおむね日額1万円から3万円の範囲で認定していたところ,
近頃(2011年当時)では,後遺障害1級では1万5000円から1万8000円のものが多くなり,中には月額2万円あるいは2万円超のものが見られます。
2万円超のものについては,24時間体制での看視あるいは数時間おきでの体位交換ということで複数の職業付添人が必要な事例においてです。(いわゆる赤い本2011年版下巻p12,13 山田智子裁判官講演録)

確かに,2006(平成18)年を境に,2007(平成19)年以降は,減少傾向にあり日額2万円を下回るものも多くあります。
また,金額が1万円以下という場合は,被害者が介護なしでもある程度のことができる場合が多いと思われます。


4 介護のあり方と費用で特に問題となるのは,どのような場合ですか。
特に問題となるのは,年少者で,家族関係の変化もあり将来の介護状況の予測が立ちにくい場合及び高齢者で事故の後遺障害に加えて介護状況に困難が認められる場合であろうと思われます。
その点について,被害者側が十分に主張立証しているならば,一定金額が認められている傾向にあると思われます。

年少者については,
①現時点での介護の方法がどのようなものか,職業付添人を利用している場合には現実にどのくらいの費用を必要としているか。
②被害者の介護方法として将来については,いつ頃,どのようなやり方になっていくのか。 を前提に判断していると考えられます。

高齢者については,
障害の程度とそれが日常生活にどのように影響を及ぼしているかどうか,
そのためにどのような介護が職業付添人からなされなければならないかを前提にしていると考えられます。
しかし,高齢者であれば介護保険による介護サービスを受けていたか,受けられることから,その現実の利用による費用を踏まえて判断しているようです。


5 職業付添人の将来の介護費用を決める要素としては,どのようなものがありますか。
職業付添人の将来介護費用を決めるものとしては,以下の点があると思います。
①介護を受ける被害者の年齢
②日常生活における介護ないし介助の状況及びそのための環境,施設介護か自宅介護か。
③近親者付添人の介護が可能か。可能であれば,いつ頃までどのような内容の介護か。
④実際に,介護保険を利用したり,あるいは私費で職業付添人がついているか。ついているとして,どのような介護を行っているか。
将来的に,その介護内容が変化するか。変化するとしてどのように変化するか。
⑤職業付添人がついている場合には,現実にそのようなサービスに対して,どのくらいの自己負担をしているか。

しかし,金額を決めるのは職業付添人が民間業者であることから,経済の市場原理が関係します。
いわゆるヘルパーという職種の担い手の増加あるいは高齢社会による需要拡大から,今後の金額がどのように推移するのか,不透明であると言えます。


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