Q.高額所得者の死亡逸失利益における生活費控除率はどう考えるべきでしょうか。

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A.

高額所得者となれば,死亡逸失利益における基礎収入は当然に高額となります。
それは,当たり前のようですが,少し考えると疑問が出ます。

第1に,高額所得者は税金額も多いので,税金を控除せずに基礎収入とすると,逸失利益が過大となり,しかも損害賠償には課税されないので,それは公平と言えないのではないかと言うことです。

第2に,高額所得者は,生活費の比率が低下するよりも,むしろ贅沢品を購入するなどして比率が高くなることもあり得るのではないかと言うことです。

1 税金は,控除すべきなのでしょうか。   (クリックすると回答)


第1の点で言えば,税金を控除しない,つまり,税金非控除について裁判所判決例は,一貫しております。

それは,納税額の決定等は専ら立法政策上の被害者と納税権者との関係であって被害者の収入全額を基礎として賠償した後で被害者ないしその相続人が取得した損害賠償金に対して課税をするかどうかも、立法政策上の被害者と納税権者との関係だからです。
また,現行法において損害賠償金に対して課税がされていないことから損害賠償額の算定に当たって収入額から税額を控除すべきとはいえないともされています(東京地裁 平成7年3月14日判決)。

2 生活費控除率の点は,どうでしょうか。  (クリックすると回答)


第2の点ですが,判決例の流れは大きく二つに分かれております。
理論的にはいずれも可能な解釈ですが,実態を見た事実認定の問題とも言えます。

(1)特に高額所得者であることを例外としない考え方
収入が増加しても生活費にかける金額は収入に比例して増加するものではなく,むしろ,生活費が収入に占める割合は(ブランド品の購入など収入に見合った生活費の増額があることを考慮しても)高額所得者ほど低下していくものと思われること,また,生活費控除率は,個々の被害者の生活実態を審理判断することが困難であることから です。
方式としては,通常どおりに被害者の家族構成・属性により一定割合を用いるとしています(横浜地裁 平成23年11月1日判決)。


(2)(1)に対して通常の一家の支柱よりも生活費控除率を大きくする考えたもあります。
被害者の収入額が一般に比較して極めて高額であって,その支出しあるいは負担すべき諸経費も少なくないと考えられる一方で,右のような不要ないし生活費援助の関係が認められること等から生活費負担は現状は,50パーセントとする(東京地裁 昭和61年8月29日判決)


(3)あるいは,生活費控除率を変動させる考え方があります。
高額所得者であり,税金の支払いも相当あること,未成年の子どもへの,生活費負担は現状では大きいが,いずれもやがては独立することを考慮すると,生活費控除率を45%とする。(東京地裁 平成7年3月14日判決,東京地裁 平成7年5月14日判決)

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