Q.椎間板ヘルニアと診断書に書いてあると素因減額の対象となるというのは本当ですか。

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A.

頸椎(頚椎)・胸椎・腰椎のすべての椎体(骨)と椎体の間にあるディスク状び椎間板が脱出することをヘルニアと言います。

ヘルニアの原因としては,加齢によるものもありますが,交通事故による外力がきっかけで,今まで無症状だったものが症状が出現して,後遺障害(後遺症)となることがあります。
素因減額として賠償の争点となりやすいものです。

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1 椎間板ヘルニアとは何か (クリックすると回答)

(1)椎間板とは
円盤状の繊維軟骨組織で,脊柱の椎体(椎骨を形成する本体)と椎体との間にあって,それらを連結すると共に外力に対するショックアブソーバーとしての役割をしています。
椎間板は,頸椎(頚椎)・胸椎・腰椎のすべての椎体と椎体の間にあります。

(2)椎間板ヘルニアとは
繊維輪組織から椎間板が脱出することを椎間板ヘルニアと言います。
多くは後方,後側方へ,まれに側方に突出します。
その結果,発生レベルに相応する神経(脊髄,神経根)を圧迫します。
そのため,疼痛やしびれなどの神経症状や神経学的異常所見(知覚・運動・反射機能,直腸・膀胱機能)が出現する状態になった病状を言います。
椎間板がある頸椎(頚椎)(頸椎(頚椎))・胸椎・腰椎すべてに椎間板ヘルニアは,発症します。

2 椎間板ヘルニアの原因・メカニズムは (クリックすると回答)

(1)頸椎(頚椎)(頸椎(頚椎))椎間板ヘルニア
①変性(加齢現象)
頸椎(頚椎)の変性は,一般に明らかな変化は40歳代に出現し,それ以後高齢になるほど,変化が見られる率は高くなる。 
この老化現象は,頸椎(頚椎)(頸椎(頚椎))のよく動く部位,すなわち,第5・第6頸椎(頚椎)間,第6・第7頸椎(頚椎)間,第4・第5頸椎(頚椎)間で発生することが多い。
椎間板の老化は,肉体労働者らラグビー選手のように,頸椎(頚椎)に大きな力がかかる場合には若年者でも生じることがある。 
頸椎(頚椎)に変性があっても,多くの人は何ら症状を訴えないが,症状が出る場合には,急激に症状が現われることはほとんどなく,肩凝りや項部の痛みといったごく軽い症状から始まり,ゆっくり進行する。

 ②変性に外力が加わる
変性に陥った髄核が脆弱化した線維輪を破って椎管内に突出したものまたは破れた線維輪から髄核が椎管内に脱出したものを頸椎(頚椎)ヘルニアと言う。
外傷が直接の原因となって線維輪の断裂が生じて,その部位から髄核の脱出を来たす例が70%くらいを占めるが,特に思い当たる要因がなくて発症するという例も少なくない。

 (2)腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアは,加齢等に伴う椎間板の退行変性の過程で生じるが,日常生活上の何らかの動作にともなって発症する場合と,はっきりした発症のきっかけが分からない場合が半々くらいであるといわれており,動作の中では重量物挙上やスポーツなどの力学的負荷がきっかけとなる例が少なくないとされている。

3 椎間板ヘルニアの原因に関する賠償側の基本的スタンスは (クリックすると回答)

とある損害保険会社の講義録より
(1)椎間板変性に対する危険因子としては,遺伝性因子が最も重要である。
従来変性の危険因子として考えられてきた職業上の負荷,脊椎外傷の既往症,振動の影響等はさほど重要ではない。
壮年者では,無症状であっても8割近くに椎間板ヘルニアが認められる。

(2)一般に椎間板ヘルニアは,椎間板の変性を基盤として発生し,その契機としては思い当たる原因や外傷がはっきりしないことが多い。
椎間板に対する外力をきっかけに発症する場合であっても,既に椎間板の変性が基盤にある。
正常に近い椎間板に強い外力が働いて外傷性に椎間板が剥がれてヘルニア状態になることもある。
しかし,この場合は,骨折や脱臼を伴うことがほとんどであり,歩行も困難となり,直ちに入院をして緊急治療を必要とするような場合に限られる。

(3)外傷性椎間板ヘルニアということはほとんどありえない。
骨折や脱臼を伴うことがない診断名だけが「外傷性椎間板ヘルニア」とは,外傷後にたまたま生じたヘルニアであり「外傷後ヘルニア」という呼び名こそがふさわしい。

(4)従って,椎間板ヘルニアの発症を外傷性として交通事故によるものと被害者が主張しても,椎間板の変性を基盤として発生したのであるから,事故の関与を否定するか,肯定しても相当な素因減額が認められるべきである。

4 結論 (クリックすると回答)


加害者側(保険会社)は,上で見たように外傷性によるヘルニアの発症を認めないか素因によるものが大きいという前提に立っていることが明らかです。 外傷性椎間板ヘルニアについては,重篤な結果を生じることがある一方で,加害者側(保険会社)から,この様な因果関係の否定あるいは大幅な素因減額を主張されることが多いものです。
被害者としても,弁護士に相談をして十分な対策対応が必要です。

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