Q.嗅覚障害とは何ですか。検査方法はどうなっていますか。後遺障害(後遺症)はどうなりますか。

[アリナミン,アリナミン静脈注射,嗅神経,嗅覚減退,嗅覚脱失,嗅覚障害]

A.

嗅覚障害には,嗅覚脱失と減退があります。

嗅覚脱失及び嗅覚の減退については,T&Tオルファクトメータによるとされていますが,ただし,嗅覚脱失にはアリナミン静脈注射検査所見のみによって確認しても差し支えないとされています。
その場合のアリナミン静脈注射検査はアリナミンPによる必要があります。

嗅覚脱失は12級相当,嗅覚の減退は14級相当の後遺障害となります。

1 嗅覚障害,何ですか。   (クリックすると回答)


においは,嗅細胞,嗅神経,嗅球,およびそこから回路を経て脳中枢に至ります。
においの識別は,嗅細胞,嗅球のレベルで行われていると言われています。
嗅球から中枢に至るまでの頭部外傷により嗅覚障害が発生することがあります。

嗅覚障害は脳自体の出血や浮腫以外に,急激な衝撃による嗅神経枝の断裂や損傷が考えられます。
それは次のように分類されます。

(1)呼吸性嗅覚障害:鼻骨あるいは鼻中隔骨折による嗅裂部の閉鎖
(2)末梢神経性嗅覚障害:嗅球と篩板との間での嗅糸の断裂
(3)中枢性嗅覚障害:前頭葉,側頭葉の挫傷あるいは血腫

そして,嗅糸の断裂(末梢神経性嗅覚障害)による場合にはほとんどが嗅覚脱失の状態となり回復は望めないとされ,また嗅球の挫傷では嗅覚の回復は望めないが,前頭葉挫傷では嗅覚脱失となることは少なく,回復の可能性もあるとされています。(赤い本2004年版p442)

すると,この発生機序に沿うような受傷がなければ因果関係を否定されることになると考えます。

2 検査方法はどうなっていますか。  (クリックすると回答)


(1)T&Tオルファトメーターによる基準嗅力検査

T&Tオルファトメーターは,日常生活で臭いをかいでいるのに最も近い状態での嗅力検査を目的としてつくられており,嗅覚程度の判定,嗅覚障害者の選別ができます。
使用する基準臭にはAからEの5種類があります。

A:花のにおい
B:焦げたにおい
C:腐敗臭
D:果実のにおい
E:糞臭

T&Tオルファトメーターにおける値による判別は,次の通りです。
5.6以上   嗅覚脱失=まったくにおいがしないことです。
4.1~5.5 高度減退=ほとんどにおいがしないことです。
2.6~4.0 中等度減退=強いにおいは分かることです。

なお,1.1~2.5は,正常または軽度減退です。
これは「においがするが弱い感じ。日常生活に支障はない。」と言うレベルです。

5.6以上      → 嗅覚脱失
2.6以上5.5以下 → 嗅覚減退


(2)アリナミン静脈注射検査

嗅覚脱失及び嗅覚の減退については,T&Tオルファクトメータによるとされていますが,嗅覚脱失にはアリナミン静脈注射検査所見のみによって確認しても差し支えないとされています。

アリナミン静脈注射検査は,アリナミンFではなくアリナミンPによる検査が必要です。
その検査が出来ないなら,T&Tオルファクトメータによるべきです。
☆アリナミンPのPとは,プルスチアミンのPです。

アリナミン静脈注射検査所見は,無反応のみが有用な所見です。
無反応とは文字通り,反応なしということです。何も感じないと言うことです。
アリナミン静脈注射の正常とされているのは潜時(反応までの待機期間でしょうか。)8から9秒,持続時間1から2分が正常値とされています。
そこから外れた場合,つまり長かったり短かったりする場合では,嗅覚脱失・減退とは言いません。

3 後遺障害はどうなりますか。  (クリックすると回答)


自賠責等級表にはなく,労災基準に準じて,

嗅覚脱失→12級相当
嗅覚減退→14級相当

となります。

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