脾臓摘出後の死亡について事故との因果関係を認めた判決です。
脾臓摘出後の死亡について事故との因果関係を認めた判決です。
しかし,持病との競合もあることから,5割の素因減額をしております。
東京地裁 昭和62年1月27日判決
<出典> 判時第1231号121頁,判例タイムズ640号211頁
交通事故により被害者は,前頭部,口腔挫創,上腹部挫傷兼内臓損傷,脾臓破裂及び肝機能障害の傷害を受けました。
被害者は,右受傷により,入院中に脾臓摘出をしています。
しかし,その後に致死性不整脈により入院先の病院において死亡しました。
被害者は,以前より白血病に罹患していたために,死亡と本件交通事故ととが因果関係があるのかが争いとなりました。
「本件交通事故によって脾臓が破裂し,脾臓摘出手術を行ったため,これを一因として血小板数が異常増加し,これにより血流が阻害されて一過性の虚血発作をおこし,心臓にも虚血性障害を与えたため,致死性不整脈をおこして死亡するにいたったものと推認するのが相当である。」と,脾臓摘出が死亡への原因である推測をしました。
しかし,他方では,以前より「被害者が以前より患っていた慢性骨髄性白血病と相まって血小板が異常増加したため,心臓に虚血性障害を与え,不整脈をおこしたとみる可能性もある。」と,交通事故と,持病の慢性骨髄性白血病の両方の可能性を認めました。
その上で,本件交通事故と死因との因果関係は認めるが,素因として白血病をとらえて5割の減額を行いました。
裁判所は,賠償側の被害者の死因は専ら持病の白血病にあるという主張は認めませんでした。
両方の可能性があるが断定できない場合として ,両者の因果関係を認めて交通事故による賠償責任としては5割の範囲で認めたものです。
素因減額という過失相殺に類似した考え方という解釈もできますが,5割の範囲で因果関係を認めたという割合的認定をしたという解釈も可能だと思います。