鎖骨変形自体では,労働能力に影響を与えないとして逸失利益を否定した判決例です。
交通事故で,建築関係会社を経営する被害者(当時49歳男性)は,右鎖骨骨折などの傷害を負いました。鎖骨変形障害が労働能力喪失と言えるかが問題となりました。
本件は否定例です。
大阪地裁 平成9年8月29日判決
<出典> 交民集30巻4号1238頁
【事案の概要】
被害者は,本件事故により負傷し,頸椎捻挫,頭部外傷,右鎖骨骨折等の傷害を負い,右鎖骨骨折については変形治癒の後遺障害を残して,それは第12級5号に該当しました。
被害者は,右上肢機能全廃の後遺障害が生じた旨主張しましたが,それは認められないが,右肩の可動域制限と事故との間には相当因果関係があり,第12級6号に該当するものとされました。
【判決の趣旨】
鎖骨変形障害は,それ自体で被害者の労働能力に影響を与えるものとは解することができない。
【コメント】
被害者は,本件事故後に直ちに鎖骨骨折と診断されて,バンド固定の保存的治療をして,経過良好とされていたところ,事故から2ヶ月過ぎる頃に鎖骨及び上腕部の不調を訴えて,別の病院で診察したところ,鎖骨骨癒合の不具合が発見されたものでした。
そして,その鎖骨骨折癒合の不良から右上肢の可動域制限が発生しています。判決は,鎖骨骨折後の癒合不全からの変形障害は労働能力には影響しないとしましたが,それを原因とする右上肢の可動域制限については頭部外傷後の症状と併せて12級相当での労働能力喪失を認めたものです。