骨盤骨変形(12級5号)の労働能力喪失を認めた判決です。

[労働能力喪失,大腿骨,後遺障害,骨折,骨盤]

骨盤骨変形(12級5号)の労働能力喪失について認めた判決です。
東京地裁 平成8年8月28日判決
平成7年(ワ)第5275号 損害賠償請求事件
<出典> 交民集29巻4号1219頁

【事案の概要】
被害者である新聞販売店事業主(男・事故時46歳・症状固定時51歳)は,左下腿骨開放性粉砕骨折の治療のため骨盤骨の一部を移植し,その結果,骨盤骨に変形が生じたというものです。左下肢が右下肢より7・5㌢㍍短縮したため靴装具を使用しなければならず,また,左足関節は拘縮しているので,その運動可能領域が,底屈が10度,背屈が10度となって,跛行があり,歩行の際,杖を使わなければならず,,左下肢短縮(8級5号),左足関節拘縮(10級11号),骨盤骨変形(12級5号)併合7級相当となりましたが,骨盤骨変形(12級5号)が労働能力喪失に影響するかが問題となりました。

【判決の趣旨】
 なるほど,左下腿骨開放性粉砕骨折の治療のため骨盤骨の一部を移植したため骨盤骨に変形が生じたことで労働能力の喪失が生じるとは考えにくい。
しかしながら,左下肢が右下肢より7・5㌢㍍短縮したため靴装具を使用しなければならないこと,また,左足関節は拘縮しているので,その運動可能領域が,底屈が10度,背屈が10度(右足関節の運動可能領域は,底屈が40度,背屈が20度である。)となっていること(なお,足趾は,拘縮はないが,背屈はできない。)から跛行があり,歩行の際,杖を使わなければならないという原告の後遺障害により新聞販売店の業務のうち新聞の配達・集金といった外勤の仕事が制限されることになり,したがって,原告の労働能力の一部喪失があると考えられる。そして,これらの状況を考慮すると,原告の労働能力喪失率は56%とするのが相当である。

【コメント】
一般論として,「骨盤骨の一部を移植したため骨盤骨に変形が生じたことで労働能力の喪失が生じるとは考えにくい。(リンク)」としながらも,「左下肢が右下肢より7・5㌢㍍短縮したため靴装具を使用しなければならないこと」と左足関節は拘縮しているため,「その運動可能領域が制限されていること」をあわせると,「歩行の際,杖を使わなければならないという原告の後遺障害により」新聞販売店の業務のうち新聞の配達・集金といった外勤の仕事が制限されることから労働能力喪失を骨盤骨変形についても認めた判決です。
極めて実態に即した妥当な判決です。

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