28歳男性美術講師の生殖機能障害について後遺障害慰謝料の増額要素とした判決です。

[インポテンツ,後遺障害,慰謝料,生殖機能,逸失利益]

被害者は,美大卒業後,美術予備校の油絵科の講師として従事する28歳男子でしたが,(1)9級10号の腰部以下の運動障害,(2)11級7号脊柱変形,(3)7級5号の左腎萎縮,生殖機能障害,(4),12級5号の骨盤骨変形で併合6級後遺障害となりました。
しかし,生殖器脳障害等については,労働能力喪失率から除外して,8級として逸失利益は計算されました。
被害者が,生殖機能障害婚姻にも支障を残すとして,後遺障害慰謝料増額を認めました。

東京地裁八王子支部 平成13年9月27日判決
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1432号

【事案の概要】   (クリックすると回答)


被害者(当時,28歳男性美術大学卒業の美術講師)は,原付自転車で進行中に,制限速度超過の乗用車に追突され,腰椎脱臼骨折,脊髄損傷等で4か月入院,31か月加療の後,①9級10号腰部以下の運動障害,②11級7号脊柱変形,③7級5号の左腎萎縮,インポテンツ,④12級5号の骨盤骨変形の併合6級となりました。

判決は,美術講師という「被害者の職務状況等に鑑み労働能力の喪失を判断する」とし,③左腎萎縮,インポテンツと④骨盤骨変形は「労働能力の喪失に結びつかない」と,その部分については逸失利益を否定しました。

しかし,被害者が無過失の事故であり,後遺障害慰謝料については③の左腎萎縮,インポテンツ等から「婚姻生活の制限が強いられることが予想される」として増額事由として考慮しました。

【判決の趣旨】  (クリックすると回答)


左右対の腎臓の左腎萎縮のみではその後遺障害により労働能力が喪失することはないことが認められ,また,逆行性射精及び勃起力の低下も,これら生殖機能の障害そのものによって直接労働能力が喪失することはないことが認められる。

しかしながら,これらの後遺障害が重大であることは明らかであるから,このことは後遺障害による慰謝料の項目で斟酌することとする。

被害者は自らは無過失の本件事故により,4か月間の入院加療と全治まで31か月の加療を要する傷害を負わされ,しかも,上記認定の後遺障害(ことに逆行性射精及び勃起力の低下=インポテンツ)を負い,そのため,社会生活のみならず,婚姻にも支障が生じ,仮に婚姻できても婚姻生活の制限が強いられることが予想されるなど,深い苦痛を受けていることが認められる。

【コメント】  (クリックすると回答)


生殖機能の障害そのものによって直接労働能力が喪失することはないということは,本件判決以外でも争点にはなることと思います。
この判決は,被害者の年齢と未婚であることから,「婚姻にも支障が生じ,仮に婚姻できても婚姻生活の制限が強いられることが予想される」として,逸失利益を否定する一方で,かなり高額の後遺障害慰謝料を認めました。

交通事故における賠償や過失判例をご覧いただき、さらなる疑問にも弁護士として明確にお応えいたします。お気軽にご相談ください。

0120-56-0075 受付時間:月~金(土日祝日も対応)午前9時30分~午後10時

フォームからのご相談予約はこちら

ページの先頭へ戻る