婚約者が死亡した場合に固有慰謝料請求が認められるのでしょうか。
判決は,婚約者であったとしても配偶者と同じには見なせる場合ではないとして否定をしました。
名古屋地裁 平成11年10月22日判決
<出典> 交民集32巻5号1612頁
婚約者の自動車に同乗していた被害者女性(当時27歳)が,追突事故により死亡したものです。
婚約者は,固有の死亡慰謝料を請求しました。なお,婚約者も負傷をしています。
婚約者Aは被害者と結婚を前提に4年間ほど交際していたものの,未だ同居もしておらず,本件事故当時,被害者の父は結婚に反対しており,結婚の日取り等につき具体的な計画はなかったことが認められ,結婚は長く具体化しておらず,未だ同居もしていなかったと認められる。
そうすると,Aと被害者との関係を配偶者又はこれと同視し得る関係と見ることはできず,したがって,婚約者死亡によるAの精神的苦痛につき第三者に対して損害賠償を請求することもできないとするのが相当である。
判決は,被害者の婚約者の固有慰謝料請求(300万円)を否定しましたが,一般論としては,婚約者であっても配偶者と同視し得る関係と見ることができる場合には,認める余地を残しています。
しかし,本件では,
(1)被害者の父は結婚に反対しており,結婚の日取り等につき具体的な計画はなかったことが認められ,結婚は長く具体化していなかったこと
(2)未だ同居もしていなかったこと
が請求を否定する根拠となっています。
それでは,この事実とは正反対の
①結婚の日程が具体的になっていた
②同居をしていた
と言ういずれかの事実があれば認める余地があると思われます。