駐車場内の合流箇所は,注視し徐行して進行する注意義務があるとした判決です。
よくある車道からショッピングセンターの駐車場内に入る「出入口通路」と,駐車場内で最初に交差する通路との交差部分における衝突事故に関する過失割合についての判決です。
札幌地裁 平成21年12月18日判決(確定)
事件番号 平成19年(ワ)第1047号 保険金請求事件
<出典> 自保ジャーナル・第1826号(平成22年7月22日掲載)
【事案の概要】
症状固定時36歳女子の被害者は,平成17年9月20日午前9時05分頃,北海道江別市内ショッピングセンター内駐車場に入場しようとして乗用車を運転中に,駐車場内の最初に交差する通路の右方向から徐行することなく進行してきた加害者運転の普通貨物車と出合頭衝突して約半年後,左腕知覚低下等加重障害として7級後遺障害を残したものです。
駐車場内の合流箇所は,最徐行して運転することが必要であるから,これを怠った加害者の過失の方が,より高いと認められるとして被害者3,加害者7の過失割合としました。
【判決の趣旨】
衝突地点は,車道からショッピングセンターの駐車場内に入る通路(「出入口通路」)と,駐車場内で最初に交差する通路(「通路」という。)との交差部分であり,出入口通路と通路は,いずれも他方に対する優先関係にはない。(中略)
加害者には,駐車場内の通路を,交差する出入口通路に向かって進行していたのであるから,出入口通路から車両が進入してくるかどうか注視する義務があったにもかかわらず,これを怠った過失がある。また,出入口通路と通路が交差する手前では,車両の進入等に備え,徐行して進行しなければならない注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,時速10キロメートル以上20キロメートル未満のスピードで進行した過失がある。
同様に,駐車場内であるから,周囲の動静に注意し,徐行して進行する注意義務があるのに,これを怠り,時速10キロメートル以上20キロメートル未満のスピードで進行した過失がある。
他方,被害者は,出入口通路と通路が交差する位置において,通路を進行してくる車両に注意して運転する注意義務があるところ,加害車両が進行してくることに気がついていながら,加害車両が停止するものと軽信し,車両を進行させた過失がある。
他方,被害者は,出入口通路と通路が交差する位置において,通路を進行してくる車両に注意して運転する注意義務があるところ,加害車両が進行してくることに気がついていながら,加害車両が停止するものと軽信し,車両を進行させた過失がある。
このように,本件事故は,被害者と加害者の双方の過失が競合して発生したものであるが,駐車場内であるから,通路はもとより,個々の車両と車両との間等からも,人や車両が頻繁に出入りすることが予想されるのであり,運転に当たっては,それらに対応できるよう,特に最徐行して運転することが必要であるから,これを怠った加害者の過失の方が,より高いと認められる。(結論として被害者3,加害者7の過失割合)
【コメント】
本件は,ショッピングセンターでの駐車場の出入口通路と駐車場内の通路の交差する場所での衝突における過失割合の事案です。これもよくあるケースと思われます。
この判決も,まずは,「出入口通路と通路は,いずれも他方に対する優先関係にはない。」と被害者,加害者が優先性を議論の軸としてことをかわしています。そして,結論としては,被害者3,加害者7の過失割合としました。その理由付けとしては,加害者が走行していた出入口通路と交差する駐車場内の通路は,車道から駐車場内に頻繁に進入してくる人や車両があるために,加害者には「車両の進入を注視する義務」「徐行して進行しなければならない注意義務があったにもかかわらず,これを怠り,時速10キロメートル以上20キロメートル未満のスピードで進行した過失がある。」と中止義務及び徐行義務違反を認めています。他方では,被害者にも交差する地点があるために3割程度の過失があるとしました。
一般化すると,駐車場内の通路を走行して合流箇所である駐車場への出入口に向かう車両には注視・徐行義務があるとも解釈することができる判決です。