飲酒運転車両の同乗者の過失相殺に関する判決です。
Aの飲酒運転を承知して同乗したBとC(本件事故で死亡)は事故原因に帰責事由があると認められ全損害額から1割を控除された判決です。
名古屋地裁 平成13年9月7日判決
損害賠償請求事件<出典> 交民集34巻5号1244頁
AとB,Cとは会社の同僚であった。
本件事故当時Aは22歳であるのに対して,Bは34歳,Cは42歳でいずれもAよりも10歳以上年長であるが,Aは事務職であるのに対してBとCの2人は運転手でありAとの間には上司部下の関係はなかった。
B,C及びAを含む9名は,まず居酒屋・カラオケ店で飲酒して,事故後の飲酒検査によると,Aの呼気1リットルにつき0・2ミリグラムのアルコールが検出された。
Aの前方不注視には飲酒の影響が相当程度あったものと推認される。
そして,B及びCはAとの関係でいわゆる無償同乗者であるところ,共に飲酒のために車両で出掛けた帰り道であって,Aが飲酒の上運転しようとしていることはB及びCのいずれも十分に知りうる状況の下で同乗していることからすると,B及びCには本件事故の原因に帰責事由があると認められ,B及びCが通勤に使用する車両等が置いてある会社に戻る途中の事故であり,その運行はB及びCについて利益を受けるものであったことを考慮すると,B及びCのいずれについても,公平の原則及び過失相殺の法理の類推適用により下記の各損害全額からそれぞれ1割を控除した額をAの負担とするのが相当と認められる。
Aには飲み会に参加すること自体を取り止めることも可能であったし,同僚を乗せて帰る予定であるのに飲酒を止めることはしなかったことからすると,本件事故当時の事故車両の運行が主としてB及びCの利益のためであったと見ることはできず,従って,上記の割合を超えて損害を減額すべきとは認められない。
本件は,会社の同僚で,運転したAが一番の年下でしたが,特に上司部下の関係ではありません。そして,時間の流れを見ると次の通りです。
1 Aが勤務先を出ようとした際に,同じ飲み会に出席しようとしているCほか3名がおり,Aと一緒に行くことになった。
2 いずれの場所でもAに飲酒を強制する者はなかったが,Aの飲酒を咎め立てしたり,止める者もなかった。
3 Aが事故車両の運転席に乗ったところ,B及びCが事故車両の後部座席に乗り込んだ。
4 A運転車両は用水内に上下を反対にした状態で転落した。
5 本件事故の原因は,Aの前方不注視で,それには飲酒の影響が相当程度あった。
判決は,「 Aが飲酒の上運転しようとしていることはB及びCのいずれも十分に知りうる状況の下で同乗していることからすると,B及びCには本件事故の原因に帰責事由があると認められ,」として「公平の原則及び過失相殺の法理の類推適用により」1割の控除を認めました。