地下駐車場での事故における過失割合に関する判決です。
居住するマンションの地下駐車場内で,バックで進行するA車に,自己の駐車区画から切り返しのため路上に飛び出してきたB車が衝突した事故について,突然切り返しを行ない道路にできてきたB車に7割過失を認めました。 【事案の概要】 【判決の趣旨】 【コメント】 判決は,「切り返しなどを行うため再度中央通路に進出するに当たっては,同通路を走行する車両の進行を妨害することのないよう」注意する義務と述べています。
東京高裁 平成11年3月31日判決
事件番号 平成9年(ネ)第4357号 損害賠償請求控訴事件
平成10年(ネ)第164号 同附帯控訴事件
(1審) 東京地裁八王子支部 平成9年9月9日判決
事件番号 平成8年(ワ)第861号 平成9年(ワ)第56号
<出典> 交民集32巻2号430頁
マンションの地下駐車場にB車に続いてA車が入っていきました。
B車が先に自分の駐車区画に入れましたが,位置を直そうとして切り返しを行うために,路上へもう一度出ようとしました。その時にはA車が待機していたのですが,B車はそれには気づいていませんでした。
A車はB車が駐車区画に入ったことを見ていたので,車庫入れは完了したものと思ってバックで自分の区画に入れようとしました。
途中からB車からは目を離してしまいました。地下駐車場ですので,暗くて駐車区画間には厚いコンクリートの壁があり,相互の見通しはよくありませんでした。
Bは,自車を運転して一旦自己の駐車区画(18)に入れたのであるから,切り返しなどを行うため再度中央通路に進出するに当たっては,同通路を走行する車両の進行を妨害することのないよう,右車両の有無を確認するなど十分な注意を払う義務を負うものというべきところ,前記のとおり,Bは,右の確認を怠り,自車の切り返しを行うべく漫然と同通路に進出した過失によって,同通路中央付近を走行(後退)していたA車の進路を妨害しA車に衝突したものであるから,Bには,右注意義務違反の過失があることは明らかである。
本件事故の状況によれば,Aは後退を始めるに際して後方に車両のないことを一応確認してはいたが,B車の車庫内の様子はA車の方向からは厚いコンクリート壁のため十分に把握することはできない状況であった上,本件駐車場は比較的狭く暗かったのであるから,このような状況のもとで後退走行しようとするAとしては,先行していたB車の車庫入れが完全に終了したかどうかなどその動静を十分確認しながら同車との接触を回避するよう注意を払うべき義務があるというべきである。
ところが,前記のとおり,Aは,後退の途中からはB車の車庫方向への注視を怠り,その車庫入れが完全に終了したかどうかなど同車の動向に十分な注意を払うことを怠ったため,突然切り返しを行って通路に出て来たB車と衝突したのであるから,Aにも右注意義務違反の過失があると認められる。
そして,先に見た本件事故の状況に徴すると,その過失割合は,B車70%,A車30%とするのが相当であり,後記損害の認定にあたっては,この割合によるAの過失を斟酌すべきである。
暗くて見通しが悪い,厚いコンクリート壁,これらから考えるとA,B相互に過失があることは分かりますが,どうしてBの方が7割となるのでしょうか。1審もほとんど同様でしたので,Bとしては納得がいかずに控訴したのでしょう。
しかし,控訴審も同じ結論でした。
それは,本件駐車場内の通路についてはほぼ道路交通法が適用される道路とみなして,一旦通路から駐車区画に入ったBに路外からの進入をしたとしたものと評価していると言えます。