事故による早産での出生した子の後遺障害と事故との因果関係についての判決です。
事故の影響で仮死状態で早産したことにより,出生した子に高度の難聴及び精神発達遅滞の後遺障害が生じた場合の因果関係についての判決です。
東京地裁 平成4年11月13日判決)
<出典> 判例タイムズ831号184頁
>【事案の概要】
本件は,玉突き追突事故の被害車両の運転者(当時妊娠中の女性)が後に男児(被害者)を出産しましたが,右事故の影響で仮死状態で早産したことにより,被害者に高度の難聴及び精神発達遅滞の後遺障害が生じました。
この事故による早産,そして後遺障害について因果関係の有無が争われました。
【判決の趣旨】
妊娠の経過には,本件交通事故に遭うまでは特段の異常もなく被害者は母体内で順調に成育していたものと認められる。
また,本件事故の態様は,その衝突の衝撃は相当強度であったものと推察される。
事故後,これまでは異常がなかった性器出血・腹部の緊張・下腹部痛等の異常が出現し,結局早産により被害者が仮死状態の未熟児として出生するに至った。
そしてこのような出生の場合,被害者にみられたような高度の難聴や精神発達遅滞が生じる確率が正常な出産に比して相当高いことが医学上も肯定されている。
以上によれば,本件交通事故とこれによる春子の受傷及び被害者の右障害の発生との間には相当因果関係を十分に肯定することができる。
被害者に生じている後遺障害の内容(高度の感音性難聴及び精神発達遅滞)からすると,その障害の程度は,自賠法施行令2条別表の第4級に相当するものと判断される。
本件判決では,妊婦が事故に遭い,妊娠7ヶ月目の早産で男児を出産し,出生した男児にも高度な難聴と精神障害が残る事案で,子供の後遺症にも相当因果関係があるもの認められました。
後遺障害4級相当の高度な難聴と精神障害,賃金センサス平均で18歳から67歳まで60%の労働能力が喪失するものとして逸失利益が認められました。
なお,加害者が免停中の事故であったことから,慰謝料増額が認められています。