むち打ち(頚椎ねんざ)14級9号・局部の神経症状の労働能力喪失期間を12年間とした判決です。
通常は,労働能力喪失期間を5年間程度に限定される局部の神経症状(疼痛)に関して12年間とした判決です。
東京地裁 平成16年2月27日判決
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1560号
31歳男子大学中退会社員の被害者は,平成7年9月14日午後2時10分ころ,タクシーが停車して,ドアを開けたため衝突,転倒し,頚椎挫傷等を受傷して,自賠責では併合14級認定(頚椎捻挫,膝の痛み)を受けました。
自賠責認定と変わらず,併合14級のままでしたが,労働能力喪失期間については,12年間としました。
その理由については,以下のとおりです。
労働能力喪失期間について検討するに原告は現在でも頸部神経症状等を訴えていること,
歩行,昇降,起立等の動作は,稼働はもとより日常生活を営む際に両膝に負担をかけるものであり,上記負荷により症状の軽快が遅れることは否定できないこと,
痛みの部位が異なること等の事情を考慮すると,
原告の後遺障害は,症状固定時から12年間,労働能力を喪失するものと判断するのが相当である。
一般には,その理由付けはさまざまですが,14級局部の神経症状に関する労働能力喪失期間については67歳までではなく,5年間とする傾向があります。
本件は,その倍以上の12年間としたものです。
事故が平成7年9月14日で判決が認定した症状固定時期は平成9年9月3日ころですから,通例の5年間であれば,平成14年9月3日ころまでとなるはずです。
これが12年間とまでなったのは通常では5年間とされる終わりの時期にきても症状の改善がされておらず,その後も続く可能性が高かったからであろうと思われます。
ただし,判決は「歩行,昇降,起立等の動作は,稼働はもとより日常生活を営む際に両膝に負担をかけるもの」との点も理由としておりますので,実態の状況についての理解に成功したと考えられます。