受傷による昇給及び昇格の延伸による不利益を休業損害として認めた判決です。
バス整備士の地方公務員(男・35歳)につき,病休による超過勤務手当,休日勤務手当の減少分26万円余,通院のための有給休暇取得分9万円余に加え,病気休暇の取得や昇給・昇格により減額された勤勉手当・期末手当のほか,症状固定までに本来の時期に昇給及び昇格していれば得られたであろう給料と現実に支給された給料差額を認めました。
横浜地裁平成23年1月18日判決
自保ジャーナル・第1844号(平成23年4月28日掲載)
原告は,病休による超過勤務手当及び休日勤務手当の減少分等以外に,昇給・昇格延伸による損害を請求しました。
すなわち,原告は,病気休職したことにより,原告が属するD局企業職員の給料表の2等級13号俸から2等級14号俸へ昇給すべきところ,この昇給が3ヶ月延伸となり,病気休職がなければ3等級11号俸に昇格すべきところ,これも延伸となったことを損害と主張しました。
被告は,病気休職と昇給・昇格延伸との因果関係が不明であるとして争いました。
D局企業職員の給料に関する規程第26条によれば,職員の昇給の区分は勤務成績に応じて決定されることが定められていること,原告は病気休職による昇給が3ヶ月延伸し,昇格も延伸されたことが認められ,本件事故による病気休職以外に昇給・昇格延伸の事由はみあたらないことから因果関係は認められる。
原告が,症状固定日までに本来の時期に昇給及び昇格していれば得られたであろう給料と現実に支給された給料額の差額が休業損害と認められ,その差額を損害として認めるのが相当である。
本件は,交通事故による休職期間が昇給及び昇格に影響を与えた場合に損害として認めるかを判断したものです。
判決は,「原告は病気休職による昇給が3ヶ月延伸し,昇格も延伸されたことが認められ,本件事故による病気休職以外に昇給・昇格延伸の事由はみあたらないことから因果関係は認められる。」として,他に事由が見当たらなければ因果関係は認められるとしました。
判決は,また,具体的な損害額としては,「症状固定日までに本来の時期に昇給及び昇格していれば得られたであろう給料と現実に支給された給料額の差額」であるとしています。