コンビニ駐車場での事故における態様別の過失割合についての判決例です。
1 二輪車を押して歩いていた際にバックの車両に衝突された事例
【被害二輪車5%:後退した加害車両95%】
は,駐車場内での二輪車を押して歩いていた被害者への後退車両の事故です。
2 コンビニ駐車場から後退した車両が歩道で停止待機中の被害自転車に衝突した事例
【被害自転車0%:後退した加害車両100%】
は,駐車場内から歩道上に後退した加害車両に100%の過失を認めた事例です。
3 双方コンビニ駐車場に前進あるいは後退により駐車しようとした際の過失割合についての事例
【被害自転車0%:後退した加害車両100%】
は,双方とも駐車場に駐車しようとした際の事故です。後退と前進では全身の方の過失が大きいとしたものです。
4 駐車しようと前進した原告車,出ようと後退した被告車の衝突の過失割合についての事例
【後退車両40%:前進車両60%】
は,駐車場から出る車両と,入ろうとした車両との事例です。運転者が前方を見ていたか,後方を見ていたかが,過失の大小の決め手となりました。
5 駐車場に右折進入Y車と駐車場から左方へ道路進入中のB車の衝突の過失割合についての事例
【駐車場に右折進入40%:駐車場から左方へ道路進入中60%】
は,4と類似しています。結論としては,4と同じ判断となりました。
6 駐車直後の車両に後退衝突した事例
【後退車両100%】
は,駐車場内の事故です。後退した車両に一方的な過失があるとしました。
7 駐車場内の後退車両と前進車両に関する事例
【双方50%】
は,駐車場内の後退車両と前進車両に関する事例です。6と似ていますが,大きな違いは双方とも動いている点です。この場合には,双方とも同等の過失責任があるとしました。
----------------------------
なお詳細は続きをご覧ください。
続きを読む
1 二輪車を押して歩いていた際にバックの車両に衝突された事例 (クリックすると回答)
【被害二輪車5%:後退した加害車両95%】
コンビニ駐車場内で,被害二輪車を押して歩行中,転回のため後退していた加害乗用車に衝突された事案で,駐車場内の事故も考慮して,被害二輪車に5%過失を認めた。
名古屋地裁平成13年8月24日判決(確定)
事件番号 平成12年(ワ)第1813号 損害賠償請求事件
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1427号
(平成14年1月24日掲載)
本件事故は駐車場内で方向転換のため後退しようとした自動車と歩行者との衝突事故であったこと,
被告は車両を後退させるにつき後方の安全確認を怠った過失があったことが認められ,これによると,本件事故発生につき被告の過失は重大であったと認めるのが相当である。
もっとも,原告も,歩行者とはいえ,車両を押しながら歩行し,機敏な動作をすることができない状態であったのであるから,周囲の安全に気を配りながら歩行等すべきであったと認められ,これを怠った原告にも過失があったと認めるのが相当である。
そして,前記事故態様,本件が駐車場内での事故であったこと等の事情を考慮すると,本件事故発生につき原告側には5%の割合の過失があったと認めるのが相当である。
2 コンビニ駐車場から後退した車両が歩道で停止待機中の被害自転車に衝突した事例 (クリックすると回答)
【被害自転車0%:後退した加害車両100%】
加害者のブザーを鳴らしており,逃げる余裕があったとして過失相殺を主張したのですが,「過失相殺の抗弁は失当である」と判決されました。
札幌地裁平成13年11月29日判決(確定)
事件番号 平成12年(ワ)第5091号
交通事故による損害賠償請求事件
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1462号
(平成14年10月10日掲載)
原告において,加害車両が自分を発見することなく,自分に向かって後退を続けることを予見したうえ,自転車のハンドルを左右に転把して逃げていれば,本件事故の発生を回避することが可能であったということができる。
しかし,およそ自動車運転手は,自動車を後退させるにせよ,後方の安全を確認しないまま自動車を後退させることは許されないことであり,このことは,歩道を後退させる場合には一層妥当する。
したがって,その後方にいる自転車及び歩行者は,特段の事情のない限り,前方の自動車の運転手が後方の安全を確認して,後方に自転車又は歩行者がいる場合には自動車を停止するものと信頼し,後退する自動車の手前で自転車又は歩行を停めれば足りるのであり,それ以上にさらに自動車が後退してくることを予想し,適宜左右に移動するなどして後退してくる自動車から自転車又は身体を避ける義務まではないものというべきである。
本件においては,原告からは前方の見通しは良く,歩道の幅員も比較的大きかったから,被告からは歩道上の視認が不良であって,その結果原告を発見できないことを予想することは困難であったといえるのであり,上記の特段の事情は見出せない。
3 双方コンビニ駐車場に前進あるいは後退により駐車しようとした際の過失割合についての事例 (クリックすると回答)
【後退車両40%:前進車両60%】
Y車が後退に対し,X車は前進状態でY車の動きを見るのが容易であったとして,Xに60%の過失を認定しました。
京都地裁平成18年10月27日判決(控訴中)
事件番号 平成17年(ワ)第2858号 損害賠償請求事件
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1667号
(平成18年12月21日掲載)
原告甲野には,前進して本件駐車場に進入するにあたり,前方を注視し安全を確認すべき義務を怠った過失が認められる。
そして,被告車両が後進していたのに対し原告車両が前進していて,原告甲野は被告乙山に比べより容易に被告車両の動きを見ることができ,より容易に本件事故を回避することができたことを考慮すると,本件事故における過失割合は,原告甲野60%,被告乙山40%と認めるのが相当である。
4 駐車しようと前進した原告車,出ようと後退した被告車の衝突の過失割合についての事例 (クリックすると回答)
【後退車両40%:前進車両60%】
双方とも停車寸前の低速衝突であり,前方を向いていた原告車4割,後方を向いていた被告車6割の過失を認定しました。
岡山地裁倉敷支部平成18年9月7日判決(確定)
事件番号 平成17年(ワ)第4号 損害賠償請求事件
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1683号
(平成19年4月19日掲載)
原告車は衝突時に前進していたこと,
原告車・被告車のいずれも損傷の程度は軽微であること,
被告車の後退する速度が大きかったと認定することはできないこと,
被告の供述の信用性は高いこと,を併せ考えれば,
被告車が,ミラーで後方の安全を確認後,オートマチック車であることからブレーキをかけながら時速約10㌔㍍で後退し,Vターンのため停止しようとした矢先,被告車が後退していく進路上に原告車が走行してきたために,原告車右側面後部が被告車左後部角を擦過したものと認められる。
他方,衝突地点から原告車が駐車しようとしていた位置までわずかな距離であること,原告車は衝突後ごくわずかに進んだのみで停止していること(証拠略)等からすれば,原告車の速度も徐行程度であったと考えられる。
このような事故態様からすれば,4割の過失相殺をするのが相当である。
5 駐車場に右折進入Y車と駐車場から左方へ道路進入中のB車の衝突の過失割合についての事例 (クリックすると回答)
【駐車場に右折進入40%:駐車場から左方へ道路進入中60%】
駐車場に右折進入Y車と駐車場から左方へ道路進入中のB車の衝突の過失割合につき,駐車場を後進,道路進入準備のB車を認めていたYに対し,右方確認で駐車場へ進入しようとしていたY車不確認のBの過失を60%の過失相殺を適用した。
最高裁平成21年9月29日決定(上告棄却)
(2審) 名古屋高裁平成21年2月12日判決
被控訴人乙山は,本件東行車線を走行中,右折して本件西行車線を横断の上,本件西行車線南側路外にある本件店舗駐車場に進入しようとしていたところ,
安全を確認してほぼ右折を終えようとした状況下で丁山車両に衝突されたのではあるが,丁山車両が本件店舗駐車場から後進して本件道路に進入する動き自体は相当手前で現認したのであるから,その動向になお万全の注意を払い,自車の右折開始時期,開始態様等(待つか,一気に本件駐車場内に入る。)に特段の注意をすべき義務を怠ったという過失が幾らかあったと言わざるを得ない。
他方,丁山は,本件店舗駐車場から本件西行車線に進入して直進するに当たっては,本件西行車線の後続車の動静に注視してその交通を妨げないよう注意すべきであるのみならず,
本件西行車線を横断して本件店舗駐車場に進入しようとする車両の動向にも注視し,事故の発生を未然に防止すべき義務があるにもかかわらず,
本件西行車線の後続車の動静に主な注意を払い,反対車線から本件西行車線を通って本件店舗駐車場に進入しようとしていた乙山車両に気付かず,本件西行車線にそのまま進入したのであるから,本件事故の発生につき,前方不注視の過失があると言わざるを得ない。
以上のとおりの諸般の事情を考慮すると,丁山に6割の過失があったというのが相当である。
【後退車両100%】
コンビニ駐車場空スペースに駐車した直後のX乗用車にY乗用車が後退衝突した事案
後退車両のYの一方的過失と認定しましたた。佐世保簡裁平成22年3月23日判決(確定)
事件番号 平成21年(少コ)第34号 損害賠償請求事件
平成21年(ハ)第752号 損害賠償請求事件
<出典> 自保ジャーナル・第1830号
(平成22年9月23日掲載)
ほとんど空いている駐車区画にXYが競合駐車しようとしての事故であり,後退を認めてクラクションを鳴らした先に駐車したXに対し,後方不確認で後退したYの100%過失を認定しました。
つまり,常時不特定の車両が出入りする駐車場で,ほとんどが空いていた状態でXが駐車しようとしていた駐車区画にYも競合して後退しようとしていたことを予見することは不可能であったとし,「クラクションを3回鳴らた」とするXに対し,Yが「後方確認を怠った」として100%過失を認めたものです。
7 駐車場内の後退車両と前進車両に関する事例(クリックすると回答)
【双方50%】
両車移動中とし,原告にも,本件事故の発生に関し,進路右前方で後退を開始した被告車の動静を注視しないで原告車を進行させた過失又は原告車の運転操作を誤った過失があったというべきであるとして,双方過失を5割としました。
東京地裁平成24年11月21日判決(確定)
被告車が本件駐車場の駐車区画から左後方に向けてゆっくりとした速度で後退を開始し,原告車が,通路を挟んで被告車の左後方にあった駐車区画から右方向に前進を開始したこと,
その後,被告車は,前記の後退開始地点から約4.2㍍後退し,原告車は,停止することなく,被告車の後方約50㌢㍍の地点まで前進したこと,
そのころ,被告乙山が原告車の接近に気付き,急制動の措置を講じたが,被告車と原告車は,互いに停止することなく衝突し,本件事故が発生したこと,以上の事実を認めることができる。
原告甲野にも,本件事故の発生に関し,進路右前方で後退を開始した被告車の動静を注視しないで原告車を進行させた過失又は原告車の運転操作を誤った過失(以下「原告甲野の過失」という。)があったというべきである。
そして,前記のとおり認められる本件事故の態様等に基づき被告乙山の過失及び原告甲野の過失を比較すると,本件事故の発生に対する寄与の程度は,被告乙山の過失が5割,原告甲野の過失が5割と評価するのが相当である。
したがって,本件事故により原告甲野に生じた損害については,5割の過失相殺を行うのが相当である。