接骨院(整骨院)の施術について医師の指示がない場合に必要性・相当性を認めるための5要件を示した重要な判決です。
医師の指示がない場合の接骨院(整骨院)における施術を認めるための5要件を示しました。
5要件とは,以下です。
①施術の必要性
②施術に有効性
③施術内容が合理的である
④施術期間が相当である
⑤施術費が相当である
具体的にはその中で1回分の金額の相当性が重視した判決です。
東京地裁 平成21年6月17日判決
<出典> 交民集42巻3号727頁
事故日 平成20年1月25日
傷病名 右膝関節打撲,右肩関節捻挫,右肘部打撲
通院期間
○○接骨院に本件事故日(平成20年1月25日)から同年5月9日まで通院した(実通院日数81日間)
医療機関は受診していない
後遺障害申請なし
本件事故で右膝関節打撲,右肩関節捻挫,右肘打撲などの障害を受けた被害者が柔道整復師による施術を受け,約5か月近く通院したが医師の指示がないこと,長期化した理由が必ずしも明らかでないことを理由に,本件事故から1か月程度の治療期間を相当であるとして治療費を認める。
(1)医師の指示がない場合の要件
医師の指示がない場合には,
①施術の必要性
②施術に有効性
③施術内容が合理的である
④施術期間が相当である
⑤施術費が相当である
の各要件を充足することを要する。
(2)具体的な当てはめ
本件についてみると,本件事故により右膝関節打撲,右肩関節捻挫,右肘部打撲の傷害を受けたのであるから,施術の必要性(①)はあるといえる。
次に,原告は,本件事故後○○接骨院のみに通院していたところ,平成20年6月15日以降は通院していないのであるから,症状が軽快し,施術に有効性(②)があったといえ,また,施術内容も合理的(③)であったといえる。
しかしながら,原告は,本件事故当日に向後およそ2週間該肢安静加療を必要と認めるとの診断を受けたが,その後5か月近く通院しているところ,原告の症状の変化,これに対する施術内容,当初の診断と比較して通院が長期化した理由等は明らかではない。
そうすると,当初の診断内容にかんがみ,施術期間として相当(④)と認められるのは,本件事故日から1か月後の平成20年2月24日までであり,これを超える施術期間が相当と認めるに足りる証拠はない。
そして,施術費は1回当たりの原告の負担額は250円であったので,施術費は相当(⑤)であったといえる。
(3)結論
したがって,本件事故日から平成20年2月24日までの25日間の通院の治療費(施術費)についてのみ本件事故と相当因果関係のある損害といえるから,本件事故と相当因果関係のある治療費は6,250円である。(請求額2万0,250円)
医師の指示がない場合に施術を認めるための要件を整理し,具体的な当てはめを示している点は重要です。
しかし,単価は極めて低い事例です。