骨粗鬆症に罹患していたことを骨折における素因減額とした判決です。

[さいたま地裁平成23年11月18日判決,大腿骨,女子,素因減額,自転車,骨折,骨粗鬆症]

事故当時,35歳女子であったが骨密度が70歳から75歳の年齢に匹敵するとして骨折と受傷との素因として骨粗鬆症であることから2割減額をしました。

さいたま地裁平成23年11月18日判決
<出典> 自保ジャーナル・第1866号(平成24年3月22日掲載)

【事案の概要】   (クリックすると回答)


平成19年6月2日,歩行者であった被害者は加害者自転車と歩道で出合頭衝突で転倒して,左大腿骨頸部骨折等により後遺障害10級相当を残す受傷をしたというものでした。
被害者は当時35歳,身長150㌢㍍,体重28㌔㌘でした。
入院期間44日及び通院期間約5ヶ月の加療を要しました。

被害者は,訴訟で賠償請求をしました。

【判決の趣旨】  (クリックすると回答)


原告の罹患している骨粗鬆症について,本件事故当時35歳の原告の左大腿骨頸部の骨密度が70歳から75歳に匹敵するものであったことを斟酌して,素因減額の対象となる疾患に当たるものとして,過失相殺の規定を類推適用することとする。

そして,その減額の割合は,以上説示した。

①被告の加害行為によって原告の左大腿骨頸部に強い外力が加わったために重篤な同部位の骨折が招来されたこと,
②原告が罹患した骨粗鬆症という疾患の特質,態様,程度に係る諸事情
を総合考慮すれば,原告に生じた損害額の20%と定めるのが相当である。

【コメント】  (クリックすると回答)


判決は,事故の外力が強いものであったことも考慮しました。
しかし,35歳という年齢に比べて骨粗鬆症は骨密度が70歳代程度と言うことから,相当進行していたものとも言えます。
素因減額の一般的な考え方では,無症状であったとしても,通常の年齢平均程度を越えるような変性があれば対象とするとされています。
事故前に無症状であったとして,いつ書状が出現してもおかしくない状況であればなおさらでした。
その点から,厳しくとらえていけば,50%あるいはそれ以上の素因減額もあり得たと思えます。

しかし,以下に引用するとおり,骨粗鬆症が若年層にも増えてきて容易に重症化しやすいという実態を被害者に有利に斟酌したものです。

骨粗鬆症は,年齢とともに有病者が増加する疾患であるが,総人口に占める65歳以上の高齢化率をみると,年々増加し続けており,今後,高齢化率は更に加速されて,2015年には26.0%,2050年には,35.7%になると予測されており,近づきつつある超高齢化社会を前に,骨粗鬆症の予防と骨折の予防が急務の課題とされている。
さらに,最近は,骨粗鬆症が若年層にも増えてきていることが指摘されている。


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