物件事故報告書が訴訟で決め手となった判決です。
人身事故で衝突地点が問題となり,過失相殺が争点となりました。
その場合に物件事故報告書の記載内容が決め手となりました。つまり,物件事故報告書を証拠として判決は尊重したものです。
千葉地裁平成25年6月5日判決(確定)
<出典> 自保ジャーナル・第1908号(平成25年12月26日掲載)
なお詳細は続きをご覧ください。
被害者44歳(男子会社代表)は,平成22年9月18日,千葉県船橋市内でガソリンスタンド給油待ちで停車中,加害者の乗用車後部に車両後部を衝突されて,外傷性頸椎椎間板ヘルニア等で約7ヶ月通院して,自賠責14級9号が認定されました。
被告である加害者は,被害者である原告には,道路を通行する加害車両の通行を妨害してはならない義務があるのに,被害車両の後部を本件GSの敷地からはみ出して停車していたと主張しました。
すなわち,はみ出さざるを得ないとすれば,SS敷地には入らず,道路上に駐車すべき義務があるとして,50%以上の過失相殺をすべきだと主張しました。
そのために,はみ出して駐車していたのかどうか,そして,衝突地点が争点となりました。
人身事故でしたが,実況見分がされず物件事故報告書を前提とした事故状況の認定が必要となりました。
物件事故報告書の発生場所に船橋市<地番略>先路上と記載されている点は,同別紙事故現場見取図には被害車両が本件GS敷地内に駐車している状況が記載されていることに照らし,(加害者である被告側の提出したリサーチ会社報告書は)正確な衝突地点を特定して記載したとまでは認められない。
そうすると,被告の上記各証拠はこれに反する証拠に比べて信用することができず,他に被告主張事実を認めるに足りる証拠はない。
物件事故報告書では,事故現場は「路上と記載されて」いるにもかかわらず,同報告書の別紙事故現場見取図には被害車両が「本件GS敷地内に駐車している状況が記載されて」いるという,矛盾している内容だったのです。
前者を信用すれば加害者の言うとおり路上に被害車両がはみ出していることも推測されます。
後者を信用すれば,被害者の言うとおり「GS敷地内に駐車」中に加害車両に衝突されたとなります。
判決は,物件事故報告書として発生場所の特定の仕方で,船橋市<地番略>先路上としたのだろうと理解をして,図面による特定の事実を重視したと考えます。
なお,この判決は事実認定に反する保険会社が行ったいわゆるリサーチ会社による事故調査について信用性を否定しています。