入院中に,無断外出したり,治療に専念していないと判断されると,費用が自己負担となります。
頚椎捻挫等を受傷して入院した被害者3名の入院治療費につき,入院中の態度,特に外出,外泊の事実から,
その必要性を3分の1と認めた(東京地裁平成7年11月28日判決,いわゆる赤い本平成25年版p2)
→要するに,残る3分の2は,自己負担としたと言うことです。
入院の必要性については、Aクリニック院長の前示説明によれば、原告ら全員につき、いずれも全期間必要なものといえるが、前認定の入院態度、特に、外出、外泊の事実に照らせば、右院長の説明を直ちに採用することができない。
もっとも、原告甲、同乙については、看護婦から入院の必要性について疑問を投げ掛けられた1月30日の前日までは、特に入院の必要性に疑義はなく、右院長の説明どおり、入院を要したものと認めるべきである。
しかし、それ以降の両反訴原告の入院及び反訴原告置鮎の入院については、前認定の入院態度、特に、外出、外泊の事実があることから、入院の必要性に疑義があり、なお、右院長の説明も総合すれば、その3分の1について必要性を認めるのが相当である。
原告甲は、1月28日に原告丙と外出したのを初めとして、外出を繰り返すようになった。29日も同様であり、30日には、看護婦から入院態度が悪いと強制退院になると注意を受けた。
また、反訴原告佐野は、夜間妻に電話をかけても留守ということが度々あり、その浮気が心配となって2月2日からは自宅での外泊を開始し、その後も、18日、22日、3月3日、4日、8日と外泊した。
3月13日に退院したが、入院期間中にテレビゲームに熱中することもあった。退院時には、頭痛、頸部痛、左親指痛は治まっていなかったが、被告らの代理人からの同クリニックの入院治療には疑問があるとの内容証明郵便が届いたことから退院に踏み切った。
原告乙は、入院当初から部屋で煙草を吸って看護婦から注意を受け、また、1月30日には外出していたことから、看護婦は、入院の必要性について疑問視した。31日も外出し、2月11日には友人の結婚式参加のため外泊し、22日も外泊した。
もっとも、首の痛さは持続し、湿布治療等が継続して行われ、3月14日に退院した。なお、2月15日ころからは、テレビゲームに熱中することもあった。
原告丙は、仕事があることから入院直後から外出があり、2月1日には、早くも看護婦は、入院の必要性について疑問視した。
携帯電話所持での入院であり、看護婦の巡視中もよく電話をしていた。
外出や外泊が続き、2月5日、7日外泊、8日夜外出、13日、15日外出、21日、22日、25日外泊、3月2日外出という状態であり、3月4日に退院した。
なお、2月18日ころからはテレビゲームに熱中することもあった。
被害者は,本件事故で受傷して,その程度は決して軽度とは言えないものです。いわゆる詐病でもなく,過剰な治療とまでは言えないものです。
そのために,入院の必要性は認められました。実際にも,体調がなかなか改善されないままで,この裁判に至ったようです。
しかし,入院後の外泊,外出が多く,仕事が忙しいとはいえども,入院患者の態度としては,よろしくなかったようです。
そのため3分の1について必要性を認められて,残る3分の2は自己負担となってしまったのです。入院したならば,おとなしくしていなければなりません。