事故による受傷のため就労後10日で退職した場合で休業損害を認めた判決です。
事故前に就職を申し込んでいた会社から事故後に採用の通知を受けた被害者(女・事故時24歳,左拇指外傷後痙性内転位(限局性ディストニア)等についての休業損害に関するものです。
なお,後遺障害については,労働能力喪失率14%,後遺症慰謝料420万円です。
問題は,治療期間中に就労を開始したが10日で受傷部の痛みのために休業し,そのまま退職していることです。
この場合において,会社から支給される予定だった月額21万円を基礎(収入)に症状固定まで7ヶ月分を,就労により得た給与7万円余を控除して認めたました
(名古屋地判平成21年2月27日)。
なお,自動車保険ジャーナル・第1797号(平成21年9月3日掲載)
【事案の概要】
原告は,本件事故発生前,製本業を営むH社に対して就職を申し込んでおり,本件事故発生後の平成15年12月26日,同社より正社員として採用するとの通知を受けたが,本件事故により受傷したためすぐには稼働できず,平成16年2月2日より勤務することとなった。
原告は,同日からH社ヘの勤務を開始し,同月17日まで稼働したものの,前記受傷による痛みのため稼働不能となって休職し,結局,同年4月ころ,H社を退職した。
原告は,上記稼働によって,稼働日数10日分として7万8,608円の給与を得たが,仮にH社ヘの勤務を継続していた場合には,月額21万円以上の給与が支給される予定となっていた。なお,原告は,同年8月からは,コンビニエンスストアでのアルバイトに就いている。
【判決の趣旨】
原告は,本件事故により,平成16年1月から7月までの7か月間につき,上記のとおり勤務したほかは休業を余儀なくされたものであり,次の計算式により,139万1,392円の休業損害を被ったものと認められる。
21万円×7か月-7万8,608円
【コメント】
本件は,事故当時には無職あったが,事故後に内定をもらっており,その後に就労した事例です。
したがって,一般的な無職者に対する休業損害の事例とは異なると言えます。
すなわち,
1
正社員として採用するとの通知を受けたが,本件事故により受傷したためすぐには稼働できず,平成16年2月2日より勤務することとなった。
2
原告は,同日からH社ヘの勤務を開始し,同月17日まで稼働したものの,前記受傷による痛みのため稼働不能となって休職し,結局,同年4月ころ,H社を退職した。
したがって,採用されてまもなく,受傷して,その受傷のために退職を余儀なくされて,そのために再び無職者となったという事例です。
したがって,事故前無職者,事故後有職者,事故による受傷のため無職者,その後アルバイトという経過をたどった場合です。
よって,実収入予定であった月額21万円を基礎収入として,アルバイトとして再就職するまでのの平成16年7月までの7か月間を休業期間とした判決の結果は妥当です。