人工骨頭,人工関節置換術について将来の治療費を認める最近の判決例です。
右股関節の疼痛除去のため,3年後の平成18年には人工股関節全置換術を施行する必要と高度の蓋然性があると認めるのので損害の算定に当たっては,人工股関節全置換術を受けることも相当因果関係のある事実として基礎にすべきである。
そして,右股関節を人工関節にした場合,後遺障害は8級に該当し,併合7級になるので,それを前提にして算定する。
また,人工股関節全置換術の金額は400万円を下らないものと認められる。
この400万円につきライプニッツ方式により年5分の割合による3年分の中間利息を控除して現価を算定すると345万5,350円になる。
4,000,000×0.8638=3,455,200
とする判決(仙台地裁 平成16年3月4日判決 <出典> 自動車保険ジャーナル・第1579号)
なお,同判決は,将来の手術を前提とした後遺障害等級認定をしています。
近い将来に確実に左膝の人工関節置換手術が必要になること,入院期間は32日間と見込まれること,治療費,入院雑費,入通院慰謝料など合計を内輪に見積もって2,200,000円とする判決(名古屋地裁 平成17年8月17日判決 <出典> 自動車保険ジャーナル・第1624号)
症状・治療経過のほか,疼痛を軽減して左膝関節機能の現状を維持することや,再発の可能性のある慢性骨髄炎の発症を予防するため,症状固定後も鎮痛剤の投与やリハビリを継続することが必要であり,現に,症状固定後も通院して治療を受けており,少なくとも1年あたり20万円程度の治療費を要することが認められる。
症状固定時には43歳であり,平成21年簡易生命表によれば,平均余命は37年(ライプニッツ係数16.7113)であるから,本件事故と相当因果関係のある将来の治療費は,次の計算式のとおり,334万2,260円となる。
(計算式)20万円×16.7113=334万2,260円
と,平均余命までの毎年にかかる将来治療費を認めた判決(東京地裁 平成24年2月3日判決 <出典> 自保ジャーナル・第1870号)
将来,人工膝のゆるみ等により,人工膝再置換術を受ける必要があり,その費用は1回当たり200万円程度であることが認められる。
そして,これは症状固定後のものであるが,残存した後遺障害の内容及び程度に照らし,特に必要かつ相当なものというべきである。
この点,被告らは,仮に当該手術が必要であるとしても,国民健康保険を利用して手術を受けるべきであり,要する費用は60万円にとどまると主張する。
しかし,現時点において当該手術に国民健康保険の適用があるとしても,実際に手術を受ける際に,要した費用の7割に相当する保険給付がされるかどうかは不確定であるというべきであるから,保険給付予定額を控除することは相当でない。
したがって,将来治療費として200万円を認めるのが相当である。
と国民健康保険の適用を前提ではなく予定額全額を認めた判決(神戸地裁 平成26年3月7日判決 <出典> 自保ジャーナル・第1926号)