事故とは相当因果関係のない原因で症状固定前に死亡した場合の休業損害に関する判決です。
事故とは相当因果関係のない原因で症状固定前に事故の6ヶ月半後に死亡した場合でも,事故当時にその死亡が近い将来において客観的に予測されていたなどの特段の事情がないとして,事故による骨折の治癒が予測される1年5か月間の休業損害を認めました。
家事手伝い(男・事故時31歳,なお,「赤い本」は女とありますが誤りと思われます。)につき,事故の6ヶ月半後に事故とは相当因果関係のない喀血による窒息が原因で死亡した場合に関するものです。
事故時点において被害者は一応健康であり,その死亡が近い将来において客観的に予測されていたなどの特段の事情がないとして,事故による骨折の治癒が予測される1年5か月間,賃セ女性学歴計18歳から19歳平均を基礎(収入)に,(休業損害)301万円余を認めたました。
(大阪地判平成14年11月26日)
なお,自動車保険ジャーナル・第1491号(平成15年5月15日掲載)
【事案の概要】
被害者は,平成5年3月大学卒業後,プラスチック加工の株式会社○△製作所のアルバイトをし,その後正規の営業社員として約2年間勤め(初任後少しずつ昇級し最後の1年間で235万3,350円の給与・賞与を取得),
税理士になる決意をし退社して簿記通信専門学校の通信教育で2年間勉強し,発声できなくなって税理士受験を断念し,大阪府から障害者3級の認定を受け,
その後は,パソコンで株取引を始めてこれで自分の生計を立てるようになり,自己所有の自動車も購入して運転するなどして,家事手伝いをしていたこと,
被害者は,前記のとおり,ウェゲナー肉芽腫症やアスペルギルス症の増悪と寛解を繰り返して,前述のように,時たま病院に入通院はしていたが,本件事故当時は,小康状態を保って一応健康に生活していたことが認められる。
【判決の趣旨】
被害者が本件事故で被った休業損害(逸失利益)を算定するに当たっては,平成11年賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計・学歴計による18ないし19歳女子の平均賃金である212万6,900円を基礎とすべきである。
そして,前判示のように,被害者の各腰椎圧迫骨折の治癒までには,その症状から推して平成10年12月25日ころから約1年間程度,即ち本件事故から約1年5か月間を要すると考えられるので,被害者の休業損害は,212万6,900円×17÷12=301万3,108円となる(円未満切捨て,以下同様)。
【コメント】
本件は,難病に少年時代に罹患していた被害者が家事手伝いなどをしていた場合において,事故の6ヶ月半後に事故とは相当因果関係のない喀血による窒息が原因で死亡したものです。
判決は,骨折が治癒すると予測される1年5か月間の期間で休業損害を認めました。
判決の理由付けとしては,「逸失利益の算定に当たっては,事故後に事故とは相当因果関係のない別の原因により被害者が死亡したとしても特段の事情がない限り,死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではない」とする最高裁判決を引用しています。これは,休業損害についても同様であると判断したものです。
家事手伝いであったことから,控え目な算定から基礎収入を男子であるが女子年齢別平均賃金に求めたと考えられます。