被害者車両と加害者車両が非接触の場合の過失割合に関する判決です。
客を見つけ車線変更をしたタクシーと非接触で転倒した自動二輪車の事故において自走二輪車の過失割合を10%と認めました。
東京地裁 平成27年12月21日判決(確定)
事件番号 平成26年(ワ)第21872号 損害賠償請求事件
<出典> 自保ジャーナル・第1968号
(平成28年6月23日掲載)
原告は,被告車のすぐ左後方を走行しており,歩道上の客が手をあげてタクシー(被告車)を呼び止めようとしているのを認識できたから,被告車が,客を乗せるために第1車線に進路変更してくることを予見できたものと認められる。
そして,原告は,本来第1車線内の左側を走行すべきであったし,第1車線の前方が工事により車線規制されているのを回避するために,第1車線内の第2車線寄りを走行せざるを得なかったのであれば,車線は異なるとしても,被告車が進路変更をしてきたときに回避できる程度の距離を保つべきであった。にもかかわらず,原告は,被告車に追従するようにその左後方を漫然と走行していたから,過失がある。
そこで過失相殺することとするが,本件事故は,被告乙山が,ハンドルを左に切るのとほぼ同時にハザードランプを点灯させただけで,左後方の安全を確認することなく進路変更したことによって,その左後方を走行していた原告が急ブレーキをかけ体勢を崩して転倒したというものである。
そうであれば,左後方の安全を確認しなかっただけでなく,進路変更の際に適切な合図を適切な時期に出さなかった点で(道路交通法53条,同法施行令21条),被告乙山の過失は重大であり,これに比べると原告の上記過失は軽度である。
したがって,原告の過失割合は1割とするのが相当である。