44歳の派遣社員について,過去の実績及び再就職の可能性もあることから,賃セ男性学歴計全年齢の7割を逸失利益の基礎収入としました。
派遣会社員(男・固定時44歳)が,平衡機能障害12級12号と外貌醜状12級13号の併合11級)の後遺障害を残しました。
事故前3ヶ月の収入は62万円余(年収250万円余)であり,事故前3年間の収入を裏付ける証拠はないが,過去(事故6年前から4年前)には平均賃金を超える収入を得ていた時期もあり,44歳では再就職の可能性もあるとして,賃セ男性学歴計全年齢の70%である396万円余を基礎収入としました。
東京判平成16年7月5日
自動車保険ジャーナル・第1579号(平成17年3月3日掲載)
【判決の趣旨】
原告の収入は,平成5年,平成6年ころには美容院等を経営して840万円の収入があったものの,事業が軌道にのらなくなった平成7年ころから減少し始め,本件事故前の平成10年,平成11年,平成12年の収入を裏付ける客観的な証拠はなく,原告の事故前3か月の収入は62万5,134円(年収にすれば,250万536円)である。
平成14年1月に再就職先を見付ける予定であったというが,その具体的な就職先等は明らかでないことからして,前記の労働能力喪失期間中,平均賃金程度の収入が得られる蓋然性があるとまでは認め難い。
しかし,過去には平均賃金を超える収入を得ていた時期もあり,44歳という年齢では再就職の可能性もあるので,事故当時の低い収入が今後も継続するとも考え難い。
したがって,逸失利益の算定においては,前記賃金センサスによる平均賃金の7割をもって(注:3,961,370円)基礎収入とする。
【コメント】
給与所得者の基礎収入(後遺障害及び死亡の逸失利益)の算定について,特に,どのような場合に賃金センサスが用いられるのか問題となるところです。
本件は,30歳未満の若年者ではありません。それどころか,40歳代で事故当時は,派遣社員でした。しかも,事故前年の収入が250万余と賃金センサスの平均額を大きく下回ります。
判決は,賃セ男性学歴計全年齢平均の7割としました。
現実収入と賃セ男性学歴計全年齢平均の乖離がかなりあります。
美容院の経営をしており,事故前の3年間は,そこそこの収入があったと言うことです。
おそらく,その職歴と収入の実績及び年齢がまだ若くて再就職の可能性があり,潜在的能力として認定したものと言えそうです。