被害者側の過失について,内妻が内夫運転車両に同乗していた場合に,内夫の過失は,考慮されるのですか。---最高裁 平成19年4月24日判決
婚姻関係にある夫婦の場合に,妻が夫運転車両に同乗して交通事故の被害を受けたとすると,その損害について夫にも過失があると,過失相殺されます。
本人ではなくとも被害者側の過失として考慮されるのです。同じことは,内縁関係でも言えるとされています。
最高裁 平成19年4月24日判決
交通事故においては,過失相殺として被害者の過失が考慮されて賠償額が減額されてしまうことがあります。
その場合に,被害者とは,被害者本人だけではなくて,広く被害者側に属する者の範囲をとらえています。
その場合の目安となるものは,被害者と身分上ないしは生活上一体をなす関係にあると見られるかどうかです。
極めて抽象的なために,具体的に被害者側に該当するか,問題となります。
内縁の夫婦は、婚姻の届出はしていないが、男女が相協力して夫婦としての共同生活を営んでいるものであり、身分上、生活関係上一体を成す関係にあるとみることができる。
そうすると、内縁の夫が内縁の妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが衝突し、それにより傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合において、
その損害賠償額を定めるに当たっては、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができると解するのが相当である。
【コメント】正式な婚姻関係とは届け出があるか否かの違いであり実態が夫婦と認められることから,被害者側としました。
「身分上、生活関係上一体を成す関係」については,具体的に判断すると言うことのようです。
本件事故の約3年前から恋愛関係にあったものの、婚姻していたわけでも、同居していたわけでもないから、身分上、生活関係上一体を成す関係にあったということはできない。
由理子と松本との関係が右のようなものにすぎない以上、松本の過失の有無及びその程度は、上告人らに対し損害を賠償した被上告人が松本に対しその過失に応じた負担部分を求償する際に考慮されるべき事柄であるにすぎず、被上告人の支払うべき損害賠償額を定めるにつき、松本の過失をしんしゃくして損害額を減額することは許されないと解すべきである。最高裁 平成9年9月9日判決
【コメント】婚姻していたわけでも、同居していたわけでもないから、身分上、生活関係上一体を成す関係にあったということはできない。としたものです。極めて妥当だと思います。