就職が内定していた学生が事故による内定取り消しされた場合にも休業損害に関する判決です。
就職が内定していた修士課程後記在学生の事故による内定取り消しについての休業損害を肯定しました。
また休業損害の金額については,就職していたはずの会社の昇給状況に合わせたものとなっています。
【いわゆる赤い本平成25年版p75の判決】
就職が内定していた修士課程後記在学生(男・事故時27歳)につき,事故により就職内定が取り消され症状固定まで就業できなかった場合に,就職予定日から症状固定まで2年6ヶ月余の間,就職内定先からの回答による給与推定額を基礎(収入)に,(休業損害)955万円余を認めました(名古屋地判平成14年9月20日)。
なお,交民集35巻5号1225頁
【判決の趣旨】
原告が本件事故日(平成10年3月7日)から症状固定日(平成12年10月7日)まで継続して入院していたことは前記に判示したとおりであり,原告は,本件事故当時IBMに就職が内定しており,本件事故に遭わなかったならば,平成10年3月末に修士課程を修了し,同年4月1日にIBMの技術開発部門の職員として就職していたはずであるのに,本件事故のため,就職内定が取り消され,その後,症状固定日の平成12年10月7日までは就業できなかったこと,この間,予定どおりIBMに就職し就業していたならば,少なくとも次のとおりの給与を得られたはずであることが認められる。
(一) 平成10年度(平成10年4月1日~平成11年3月31日) 金355万4500円
(二) 平成11年度(平成11年4月1日~平成12年3月31日) 金401万5000円
(三) 平成12年度(平成12年4月1日~平成12年10月7日) 金198万0822円
内訳:22万9500円×5(4月,5月,7月,8月,9月分)+78万1500円
(6月分)+5万1822円(10月分)
したがって,原告は,本件事故により,症状固定日の平成12年10月7日までの間に,上記の合計金955万0322円の休業損害を被ったものと認められる。
【コメント】
大学院修士課程後期に在学中に事故に遭い,2年7ヶ月の入院生活を余儀なくされた事案です。そのために内定していた就職先も取り消されてしまったというものです。休業損害を肯定することは当然と思いますが,そのまま就職した場合の昇給状況を把握して現実の損害にほぼ近い休業損害を認めている点が注目されます。