高次脳機能障害の後遺障害となった学生の症状固定前の無就労状態の休業損害に関する判決です。

[休業損害,学生,高次脳機能障害]

高校2年生が事故に遭い,その後症状固定前である高校卒業後に進学も就職もできない状態になった時にその間の休業損害は,どうなるのかという事例です。

高校2年生(男・固定時19歳,高次脳機能障害5級2号)につき,事故がなければ,高校卒業と同時に就職し高卒年齢別の平均収入を得ることができたとして,高校卒業年の4月1日から症状固定まで230日間(休業損害)152万円余を認めました。
前橋地高崎支判平成18年9月15日
自動車保険ジャーナル・第1688号(平成19年5月31日掲載)

【事案の概要】
原告は,病院入院中の平成12年12月復学し(高校2年の2学期),平成14年3月には卒業しました。
原告は,本件事故前,同級生と同じように高校卒業と同時に就職する予定でいたが,本件傷害のためそれを果たすことができませんでした。
その代わり,原告は,高校卒業と同時に,専門学校に通うようになりました。
入学後,原告は,記銘力障害のため,勉強についていけず,平成15年12月から学校に通わなくなりました。
原告は,平成16年3月,専門学校2校を受験ものの,いずれも試験は小論文と面接であったが,合格することはできませんでした。

原告は,働く気持ちがあり,平成15年12月,コンビニのアルバイトに応募しました。しかし,原告は,試用期間の4日目で雇用を断られてしまいました。
母は,家にいては原告が引きこもってしまい,リハビリにならないと考え,費用さえ出せば通えるところを探し,平成16年3月から,原告を整体の学校である学院に通わせることにしました。
原告は,週3回,母の送迎を受け,学院に通いました。原告は,通常の3,4倍の時間がかかったが,同学院の終了認定証を受け,平成16年中に同学院への通学をやめました。しかし,整体の仕事には就くことはできませんでした。

【判決の趣旨】
原告は,本件事故当時,高等学校の2年次に在籍しており,本件事故がなければ,同高校卒業と同時に就職し,平成14年産業計高卒男性労働者年齢別平均賃金である242万6,500円の収入を得ることができた高度の蓋然性があったが,原告は本件事故による傷害(本件傷害)のため,高校を卒業した後の平成14年4月1日から症状固定日である同年11月16日まで(230日間)就労することができず,同期間に対応する収入を得ることができなかったことが認められるのであり,これによる損害は次の計算式により152万9,027円と認められる。
(計算式)2,426,500円-365日×230日=1,529,027.3円

【コメント】
本件は,高校2年生で事故に遭い高次脳機能障害による後遺障害5級を残存した事案です。判決は,結論として高校卒業後直ちに,就職していたとして症状固定までの230日間の休業損害を高校卒業年齢別の平均賃金で認めたものです。
これでも分かるとおり,実際には,高校卒業後には専門学校に入学して途中退学,再度専門学校受験するも不合格でした。
整体の学校に通って終了したものの整体の仕事には就くことができなかったし,コンビニのアルバイトの仕事にも採用されませんでした。

被告側は,事故後に専門学校に通学したことをもって高校卒業後に就職した蓋然性がなかったと反論しています。
しかし,被害者が専門学校に入学をしたのは,高校卒業後に就職ができる状況ではなかったからです。
さらに,卒業も学校側の支援の体制があったから可能だったとも言えます。妥当な判決だと考えます。

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