高校3年生の事故について,大学卒業を前提に休業損害を認めた判決です。

[休業損害,基礎収入,女子,植物状態,賃金センサス,遷延性意識障害,高校生]

女子高校3年生が,事故に遭って遷延性意識障害1級3号を後遺した事案です。
そのまま順調に大学を卒業したであろう年の4月1日から症状固定まで518日間の休業損害を賃金センサス女性大卒年齢別に従い認めました。

【いわゆる赤い本平成25年版p76の判決】
高校3年生(女・固定時23歳,遷延性意識障害1級3号)につき,事故に遭わなければ大学に入学・卒業していた蓋然性が高いとし,賃セ女性大卒20歳から24歳平均を基礎(収入)に,大学卒業年の4月1日から症状固定まで518日間(休業損害)426万円余を認めました(大阪地判平成19年1月31日)。
なお,自動車保険ジャーナル・第1703号(平成19年9月20日掲載)

【事案の概要】

〈原告らの主張〉
a 原告花子は,本件事故当時,高校3年生であったが,本件事故3日前大学への推薦を得て平成9年3月に高校を卒業後,大学に進学することになっており,基礎収入は少なくとも賃金賃金センサス平成13年第1巻第1表,産業計・企業規模計・女性労働者・大卒,全年齢平均賃金年収453万0,100円によるべきである。
b 原告花子は,症状固定時(平成14年8月31日),23歳であり,厳密には,大学を卒業して就労可能となる22歳時からの1年間の逸失利益は休業損害となる。
〈被告らの主張〉
原告花子は,実際に大学に入学していないから,高卒女子の平均賃金が用いられるべきである。
また,事故日から症状固定日までの中間利息は控除されるべきである。

【判決の趣旨】
原告花子は,本件事故当時,高等学校の3年生であったが,平成8年10月18日,同校から,大学への推薦書が提出されたことからすると,原告花子は,本件事故に遭わなければ,平成9年4月に同大学に入学し,平成13年3月に卒業していた蓋然性が高かったと認められ,その場合,就労開始日である平成13年4月1日から症状固定日である平成14年8月31日まで(518日間)休業することになったと考えられる。
したがって,基礎収入としては,賃金センサス平成13年第1巻第1表,産業計・企業規模計・女性労働者・大卒,20ないし24歳平均賃金年収300万6,000円が相当であり,休業期間は518日間であるから,休業損害は,次の計算式のとおり,426万6,049円となる。
(計算式) 3,006,000×518÷365=4,266,049

【コメント】
本件は,高校3年生で事故に遭い遷延性意識障害として後遺障害1級3号を残存した事案です。長期の療養を要し,また,残存症状から大学進学・卒業はかなわぬこととなりました。
しかし,基礎収入として女性労働者・大卒,20ないし24歳平均賃金を採用して,そのまま大学を卒業したであろう年の4月1日から症状固定までの期間を休業期間として休業損害を認めました。
大学への推薦を得ていたことから認定も容易であったと思われます。

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