内妻も過失相殺においては他人ですか。(最高裁 平成19年判決)
婚姻関係にある夫婦の場合に,妻が夫運転車両に同乗して交通事故の被害を受けたとすると,その損害について夫にも過失があると,過失相殺されます。(最高裁
昭和51年3月25日判決)
本人ではなくとも被害者側の過失として考慮されるのです。
同じことは,内縁関係でも言Lかどうかが問題となり,最高裁 平成19年4月24日判決は,この点について判断をしました。
さらに,婚約関係の場合についての最高裁判決もあります。
交通事故においては,過失相殺として被害者の過失が考慮されて賠償額が減額されてしまうことがあります。
その場合に,被害者とは,被害者本人だけではなくて,広く被害者側に属する者の範囲をとらえています。
その場合の目安となるものは,被害者と身分上ないしは生活上一体をなす関係にあると見られるかどうかです。
極めて抽象的なために,具体的に被害者側に該当するか,問題となります。
2 最高裁平成19年4月24日判決の趣旨はどうですか。 (クリックすると回答)
既に,被害者側には婚姻関係にある夫婦の一方も含まれて過失相殺の対象となるとされています(最高裁 昭和51年3月25日判決)。
そのキーワードは「被害者本人と身分上,生活関係上,一体をなすとみられるような関係にある者」でした。
今回は,内縁関係にある場合にも,このキーワードに該当するかが問題となります。
内縁の夫婦は,婚姻の届出はしていないが,男女が相協力して夫婦としての共同生活を営んでいるものであり,身分上,生活関係上一体を成す関係にあるとみることができます。
そうすると,内縁の夫が内縁の妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが衝突し,それにより傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合において,その損害賠償額を定めるに当たっては,内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができると解するのが相当であるとしています。
【コメント】
正式な婚姻関係とは届け出があるか否かの違いであり実態が夫婦と認められることから,被害者側としました。
「身分上,生活関係上一体を成す関係」については,法律上の夫婦かどうかではなくて,具体的に判断すると言うことです。
3 結婚予定の婚約者の場合にはどうなりますか。 (クリックすると回答)
事故の約3年前から恋愛関係にあったものの,婚姻していたわけでも,同居していたわけでもないから,身分上,生活関係上一体を成す関係にあったということはできない(最高裁 平成9年9月9日判決)というのが,最高裁の流れです。
これは,内縁関係について被害者側の過失とした最高裁平成19年4月24日判決とおなじです。