痛みが激しい場合にも関節の可動域制限の測定は,自動ではなく他動によらなければならないとした判決です。
右上肢の可動域制限は,原告が自動で測定すべきであるとする所以の「痛み」が,本件事故による器質的損傷によるものであることを認めるに足りる明確な証拠に乏しいこととなるから,他動で測定すべきこととなる。
大阪地裁 平成22年5月24日判決
<出典> 自保ジャーナル・第1843号
可動域制限の測定において,「痛み」により自動でなければ測定できない場合には,他動による測定値ではないために後遺障害の該当性が否定されてしまうのでしょうか。
この点について,労災の測定要領において,「関節を可動させるとがまんできない程度の痛みが生じるためには自動では可動できないと医学的に判断される場合」他動運動による測定値を採用することが適切ではない,つまり自動によることが認められています。
しかし,ここでいう「関節を可動させるとがまんできない程度の痛みが生じるためには自動では可動できないと医学的に判断される場合」とはどのようなことでしょうか。
特に「医学的に判断される場合」の意味です。
大阪地裁 平成22年5月24日判決(本件判決)は,以下のように述べています。
原告の右上肢の機能障害が本件事故によるものであるという可能性を示唆するものではあるが,本件事故による器質的損傷によるものであることを認めるにいたるものではなく,他にこれを認めるに足りる的確な証拠に乏しいということとなる。
同様に,原告の右上肢の可動域制限は,原告が自動で測定すべきであるとする所以の「痛み」が,本件事故による器質的損傷によるものであることを認めるに足りる的確な証拠に乏しいこととなるから,他動で測定すべきこととなる。
すなわち,痛みが器質的損傷によるものであることを認めるに足りる的確な証拠に乏しい場合には,自動ではなく,他動で測定するとされています。
「医学的に判断される場合」とは器質的損傷によるものであることを認めるに足りる的確な証拠 があるとイコールとなります。
なお,本件事故においては痛みについては医学的に証明できるとして12級13号の「局部に頑固な神経症状を残す」とされています。