内縁の夫運転車両同乗中に他車と衝突受傷した内妻の損害について夫の過失が「被害者側の過失」として過失相殺の対象となるか。
内縁の夫婦は,法律上の夫婦ではなく,言わば事実状態です。
その場合においても夫婦としての共同生活を営んでいるので内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮するとしました。
最高裁 平成19年4月24日判決
被害者は,内縁の夫の運転する自動車に同乗していたところ,同車と加害者運転の自動車とが衝突した本件事故により受傷しました。
加害者が被害者に支払うべき損害賠償額を定めるに当たっては,内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができるかが問題となります。
不法行為に基づき被害者に対して支払われるべき損害賠償額を定めるに当たっては,被害者と身分上,生活関係上一体を成すとみられるような関係にある者の過失についても,民法722条2項の規定により,いわゆる被害者側の過失としてこれを考慮することができる。
(最高裁昭和42年6月27日第三小法廷判決,最高裁昭和51年3月25日第一小法廷判決)
内縁の夫婦は,婚姻の届出はしていないが,男女が相協力して夫婦としての共同生活を営んでいるものであり,身分上,生活関係上一体を成す関係にあるとみることができる。
そうすると,内縁の夫が内縁の妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが衝突し,それにより傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合において,その損害賠償額を定めるに当たっては,内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができると解するのが相当である。
一般論として「身分上,生活関係上一体を成す関係にある」夫婦と同視できる内縁関係にある場合に被害者側の過失として過失相殺を損害に対してすることは妥当と思います。
問題は,内縁関係としての実態という事実関係が慎重になされることであると考えます。
単なる同棲生活を送っている場合にはどうなるのか問題になろうかと思われます。