独身で実父の介護をしていた場合に家事従事者と認めた判決です。
被害者(29歳,看護助手,判決で5級2号を認定される)につき,事故前3ヶ月の収入は日額1826円しかないが,働きながら実家で病気の父親の透析などの介護をしていたことから,賃セ女性学歴計年齢別平均332万7200円を基礎収入にして928日間845万円余の休業損害を認めました。
神戸地判平成14年1月17日
自動車保険ジャーナル・第1451号(平成14年7月18日掲載),交民集35巻1号47頁
原告が,事故時29歳であるところ,女子労働者学歴計29歳の年収332万7,200円を基礎収入とすると主張したところ,
被告は,原告は事故前は看護助手として勤務しており,休業証明書によれば事故前3か月間の収入の平均は1日当たり約1,705円であるから,休業損害は賃金センサスではなく実額を基に算定すべきであると主張して,争いとなりました。
休業損害証明書(証拠略)によれば,原告の事故前3か月の収入の合計額は16万8,015円であるから,これを92日で割ると,1日当たりの収入額は1,826円となる。
しかしながら,原告は,働きながら実家で病気の父親の透析などの介護をしていたことが認められるから,休業損害を算出するにあたっての年収としては,女子労働者学歴計29歳の年収額332万7,200円を用いるのが相当である。
本件判決の事案はいわゆる主婦ではありませんでした。独身で看護助手という被害者です。
しかも収入は1日当たり1,826円という決して高いものではありません。
原告の主張は賃金センサスを適用すべきであるというものに対して,被告はその低い実収入でという主張でした。
判決は,結論としては,原告の主張の通りです。その理由としては,「働きながら実家で病気の父親の透析などの介護をしていたことが認められる」ことをあげています。
つまり,介護と並行しているために賃金が低い状態に甘んじていたことには理由があるとするものでした。
さらに,被害者が当時30歳未満の若年者に該当することも賃金センサスを採用した理由にはなっていると考えます。