将来の介護用具(車いす,ベッドのみならず備品等)について定期的な買い替えを前提に詳細に算定した判決です。---交通事故賠償は,むさしの森法律事務所
両下肢不完全麻痺,膀胱直腸障害(別表第1の1級1号)の被害者(男・固定時32歳)です。
特殊寝台専用マットレス(1枚4万円余),体位変換補助用具(1台1万円余)を3年毎,
日常用車椅子(1台33万円余),車椅子付属品(1個2万円余),特殊寝台専用手すり(1回9万円余),ベッドサイドテーブル(特殊寝台付属品)(1個5万円余),トイレ用手すり(1回10万円余),浴室移乗台(1台12万円),を5年毎,
外出用車椅子(1台61万円余),入浴時の移動式リフト(1台60万円余)を6年毎,特殊寝台(1台33万円余)を8年毎
にそれぞれ買替えるなどとして,合計850万円余を認めました。
さいたま地裁 平成22年9月27日判決
<出典> 自保ジャーナル・第1840号(平成23年2月24日掲載)
原告太郎(=被害者)は,現在も,上肢は動くものの,胸から下は全部麻痺した状態であり,一生介護を必要とし,歩行はできない状態である。
原告太郎は,上肢を使用して,食事,着替え,洗顔を自分ですることができるほか,転倒防止等のため介助者の手助けを得て,車椅子の乗り降り,入浴を自分ですることができる。
車椅子で外に出た際も,車椅子が転倒した場合に備えて,介助を必要とする。
現在,定年退職した原告一郎が毎日昼食を持って同マンションを訪れ,原告太郎の介護にあたるほか,ヘルパーが夜に来て,洗濯等をしてもらうとともに,翌朝のご飯まで炊いてもらい,原告花子も,1日おきに来て介護に従事している。
(ア) 日常用車椅子 109万2,543円
原告太郎は,上記日常用車椅子を必要とするところ,上記に認定のとおり,原告太郎は,平成17年9月日常用車椅子1台を10万6,800円で購入したものであるが,今後,日常用車椅子1台33万9,700円を購入することを希望していること,同車椅子の耐用年数は,5年であることが認められる。年5分の割合で中間利息を控除すると,次のとおり109万2,543円となる。
33万9,700×(0.7835+0.6139+0.4810+0.3768+0.2953+0.2313+0.1812+0.1420+0.1112)=109万2,543
(イ) 外出用車椅子 198万4,835円
原告太郎は,上記外出用車椅子を必要とするところ,原告太郎は,平成19年12月10日,外出用車椅子(電動車椅子)1台を61万4,500円で買い替えたこと,同車椅子の耐用年数は,6年であることが認められる。
年5分の割合で中間利息を控除する。
(ウ) 車椅子付属品(移乗用) 7万2,784円
原告太郎は,上記車椅子付属品を必要とするところ,原告太郎は,平成19年10月頃,車椅子付属品1個を2万475円で購入したこと,同車椅子付属品の耐用年数は,5年であることが認められる。
年5分の割合で中間利息を控除する。
(エ) 特殊寝台 105万799円
原告太郎は,上記特殊寝台を必要とするところ,上記に認定のとおり,原告太郎は,平成18年1月下旬,特殊寝台1台を33万1,380円で購入したものであるが,今後,特殊寝台58万4,850円を購入することを希望していること,同特殊寝台の耐用年数は,8年であることが認められる。
年5分の割合で中間利息を控除する。
(オ) 特殊寝台専用マットレス 26万1,277円
原告太郎は,上記特殊寝台専用マットレスを必要とするところ,原告太郎は,平成17年12月頃,同専用マットレス1枚を4万4,100円で購入したこと,同専用マットレスの耐用年数は,3年であることが認められる。
年5分の割合で中間利息を控除する。
(カ) 特殊寝台専用手すり 33万5,928円
原告太郎は,上記特殊寝台専用手すりを必要とするところ,原告太郎は,平成17年12月頃,同専用手すり2個を9万4,500円で購入したこと,同専用手すりの耐用年数は,5年であることが認められる。
年5分の割合で中間利息を控除する。
(キ) ベットマットレス用ボックスシーツ(防水シーツ) 95万1,797円
原告太郎は,上記ベッドマットレス用ボックスシーツを1年に6枚必要とするところ,原告太郎は,平成17年12月頃,同ボックスシーツ6枚を5万3,550円で購入したことが認められる。
(ク) ベッドサイドテーブル(特殊寝台付属品) 17万2,227円
原告太郎は,上記ベッドサイドテーブルを必要とするところ,上記に認定のとおり,原告太郎は,平成18年1月ベッドサイドテーブル1個を4万5,000円で購入したものであるが,今後,ベッドサイドテーブル1個を5万3,550円で購入することを希望していること,同ベッドサイドテーブルの耐用年数は,5年であることが認められる。
年5分の割合で中間利息を控除する。
(ケ) トイレ用手すり 38万7,473円
原告太郎は,上記トイレ用手すりを必要とするところ,原告太郎は,平成17年12月頃,トイレ用手すりを合計10万9,000円で購入したこと,同手すりの耐用年数は,5年であることが認められる。
年5分の割合で中間利息を控除する。
(コ) 浴室用手すり 11万6,688円
原告太郎は,賠償を得て自宅を改造した場合に,上記浴室用手すりが必要であり,合計7万3,900円で購入することを希望していること,同手すりの耐用年数は,10年であることが認められる。
年5分の割合で中間利息を控除する。
(サ) 浴室用移乗台 42万6,576円
原告太郎は,上記浴室用移乗台を必要とするところ,原告太郎は,平成17年12月頃,浴室用移乗台1台を12万円で購入したこと,同移乗台の耐用年数は,5年であることが認められる。
年5分の割合で中間利息を控除する。
(シ) 自助具(ガットリハビリィ) 1万6,796円
原告太郎は,上記自助具を必要とするところ,原告太郎は,平成17年12月頃,自助具1個を4,725円で購入したこと,同自助具の耐用年数は,5年であることが認められる。
年5分の割合で中間利息を控除する。
(ス) 入浴時の移動式リフト 100万2,484円
原告太郎は,賠償を得て自宅を改造した場合に上記入浴時の移動式リフトが必要であるので,1台を60万円(取付工事費15万円を含む。)で購入することを希望していること,同移動式リフトの電装部品16万5,000円(取り替え工事費2万円を含む。)の耐用年数は,6年であることが認められる。
年5分の割合で中間利息を控除する。
(セ) (ス)の保守点検費用 21万5,778円
上記(ス)の保守点検費用として年間1万8,000円が必要であることが認められる。
(ソ) 外出時の移動式リフト 0(原告の請求額は88万5,145円)
上記外出時の移動式リフトは,車椅子を昇降させて段差を解消するための器具と認められるところ,下記ケに認定のとおり,自宅にある段差を解消することも目的として改造するのであるから,上記外出時の移動式リフトが必要であるとは認め難い。
(タ) (ソ)の保守点検費用
上記(ソ)と同一の理由により,認められない。
(チ) 床ずれ予防用具 28万7,938円
原告太郎は,上記床ずれ予防用具を必要とするところ,原告太郎は,平成17年12月頃,床ずれ予防用具を11万3,400円で購入したこと,同予防用具の耐用年数は,7年であることが認められる。
年5分の割合で中間利息を控除する。
(ツ) 体位変換補助用具 8万8,336円
原告太郎は,上記体位変換補助用具を必要とするところ,原告太郎は,平成17年12月頃,体位変換補助用具1台を1万4,910円で購入したこと,同補助用具の耐用年数は,3年であることが認められる。
年5分の割合で中間利息を控除する。
(テ) 扁足予防用具 4万435円
原告太郎は,上記扁足予防用具を必要とするところ,原告太郎は,平成17年12月頃,扁足予防用具1台を6,825円で購入したこと,同予防用具の耐用年数は,3年であることが認められる。
年5分の割合で中間利息を控除する。
(2)将来の雑費 973万1,265円
原告太郎は,神経因性膀胱炎により,毎日3,4本のペットボトルの水を飲むほか,カテーテルを使用してペットボトルに自己導尿しており,原告花子がトイレに尿を捨て,容器は,収集日に出していること,このほか,原告太郎は,生涯,おむつ代(紙おむつ,尿取りパット,平おむつ等,1日1,221円)の支出を要することが認められる。
将来の介護用具の買替期間=耐用年数について車椅子,介護用ベッド(特殊寝台)については,既に裁判例が累積されていますが,本件では,それらに加えて移動式リフトのみならず補助用具,付属品等についても詳細に認定しました。
特殊寝台専用マットレス(1枚4万円余)=3年
体位変換補助用具(1台1万円余)=3年
日常用車椅子(1台33万円余)=5年
車椅子付属品(1個2万円余)=5年
特殊寝台専用手すり(1回9万円余)=5年
ベッドサイドテーブル(特殊寝台付属品)(1個5万円余)=5年
トイレ用手すり(1回10万円余)=5年
浴室移乗台(1台12万円)=5年
外出用車椅子(電動車椅子,1台61万円余)=6年
入浴時の移動式リフト(1台60万円余)=6年
特殊寝台(1台33万円余)=8年
浴室用手すり(1式7万円余)=10年
買替の前提としての金額は概ね現実の購入額となっています。(浴室用手すりについては購入予定額ですが,自宅改造が将来のもののとなっており,その際の浴室改造に伴うことからいることから見積額になっています)
車椅子については,通常の手動式(手押し)5年,電動式6年というのが定着した感があります。
特殊寝台(介護用ベッド)については,8年としていますが,10年とする判決(さいたま地裁 平成16年1月14日判決)もあります。
購入価額が後者は倍以上であり,製品のグレードによるのでしょうか。